お酒に「健康によい適量」などない

お酒については飲み過ぎると、肝臓、大腸、食道がんなどのリスクを高めることが知られています。

日本人男性を対象とした研究で判明したもので、1日当たりの平均アルコール摂取量が純エタノール量で23グラム未満の人に比べて、46グラム以上の場合では40%程度、69グラム以上では60%程度、がんになるリスクが高くなるとされています。とくに食道がん、大腸がんと強い関連があり、女性は男性ほどハッキリしないものの、乳がんのリスクが高まるようです。

ちなみに国立がん研究センターが飲酒量の目安としている酒量は、日本酒なら1合、ビール大瓶なら1本、焼酎・泡盛では原液で1合の3分の2、ウィスキー・ブランディーではダブル1杯、ワインならボトル3分の1です(お酒の純アルコールでの計算)。

一方、健康日本21(健康意識向上を促そうとする運動)が言う飲みすぎの人とは「1日平均純アルコール約60グラム(日本酒にして3合)を超えて摂取する人」で、生活習慣病のリスクを高める量とは、1日あたりの純アルコール摂取量が男性40グラム(日本酒で2合)以上、女性20グラム(日本酒で1合)以上です」。

「ワイン1本」は「タバコ5本」と同じくらいの発がんリスク

では、上記に示した適量なら本当に飲んでいいのでしょうか。確かに昔から「お酒は百薬の長。少しくらい飲んだほうがいい」、「ワインはポリフェノールが含まれているので体によい」、「循環器の病気予防には適量のお酒がよい」という意見もあります。

一石英一郎『親子で考える「がん」予習ノート』(角川新書)

しかし、最近は「健康によい酒量などない、飲まないのが一番」という報告が相次いでいることに注意しておくべきでしょう。

例えば、2018年には世界的な医学雑誌の『ランセット』に1990年から2016年までの195の国と地域でのアルコール消費量と死亡の関連性を調べた研究結果が報告されています。それによると調査期間中の男性死亡の2.2%、女性死亡の6.8%にお酒が関わっていて、論文の著者は「健康によい適量などない」と結論付けました。

また、2019年3月末には英国サウサンプトン大学の研究者が調査により、ワイン1本(750ミリリットル)を飲むことは男性ならタバコ5本、女性なら10本吸うのと同じくらい発がんリスクをアップするとの推測を発表しています。

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