マスクは性能より使い方

さらにマスクの話。巷にはウイルスカットを掲げた商品があふれるが、意外にも多くの研究でインフルエンザに対するマスク単独での効果は認められていない。WHOのガイドラインでもマスクの日常的な使用を勧めていない。

「マスクは本来予防というより、咳などの症状を持つ人がほかの人に移さないためにつけるもの。インフルエンザの家庭内感染を調べた研究では、マスク着用群の感染率が約16%で、マスクをしない群が15%。ただし、マスクを着用してかつ手洗いをすれば、インフルエンザの発症率を35~51%に減らせる報告があります」(貫井医師)

感染者が咳をしてしぶきが飛んだとき、近くにいた人がマスクをしていればその表面に付着するので、感染者と非感染者のお互いがマスクをすれば感染防止になる可能性が高い。

最も大切なのはマスクのつけ方で、鼻が出ているような状態はもちろん×。そしてマスクのつけ外しは、ガーゼの部分ではなくゴム紐の部分を持つこと。

「多くの人がマスクを正しく使えていません。マスクをつける前、また食事時などにマスクを外した後は手を洗いましょう。19年末に海外から出た論文で、高機能マスクのほうがインフルエンザ感染率が高いという報告がありました。マスクの性能を高めるより、市販の使い捨てマスクを一日数回交換したほうが予防に有効だと考えます。なぜならマスクの表面にはウイルスがたくさん付いていますから、うっかり触れて感染してしまう可能性が高い。マスクの再利用はNGです」(大谷医師)

最後に特別に注意を要する人として、肥満者がインフルエンザに感染すると重症化しやすいという報告がある。肥満による慢性炎症が関係しているとみられる。平成横浜病院の東丸貴信医師は「持病のある高齢者、低栄養の人」にも注意を呼びかける。

「実際に新型肺炎にかかった人の約3割近くが高血圧や糖尿病、心臓血管病といった持病があったことが、つい先日、ランセットに論文報告されました」

大谷医師は「年を取るほど日光を浴びることを心がけるとよい」という。ビタミンDの血中濃度が保たれると、呼吸器感染症やインフルエンザ発症を抑えられるという確かな裏付けがある。ビタミンDの生成には日光が不可欠だ。

睡眠時間と風邪発症の関係を調べた研究報告には、5時間以下の睡眠の人は7時間睡眠に比べて4.5倍も風邪を発症しやすいとある。睡眠と栄養を十分に取り、日光をしっかり浴び、新型も“旧式”ウイルスも撃退しよう。

(写真=PIXTA)
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