6年生「急にクラスが散り散りになって寂しい」

突然休校になったことによる、子どもたちへの精神面での影響も心配です。小学校であれば、急な非日常感もあり、「休みが増えた」とその時点では喜んだ子も多いでしょう。ですが、家にこもって仲の良い子と遊んだり、だらだら過ごしたりするのも、せいぜい1週間で飽きるものです。それ以降、自分のクラスが突如終わってしまったことの喪失感や別れが、じわじわとつらくなってくる子どもが増えてくるかもしれません。

小学校6年や中学3年などの卒業学年は、さらに深刻です。私の自治体では、卒業生と教職員、保護者だけで卒業式を行う予定ですが、それまではクラスで集まることもありません。教師も子どもたちとの急な別れは寂しいものですが、子どもたちからすればなおさらでしょう。6年や3年通った学校や友だちに突然別れを告げないといけないのは、さぞかしつらいことでしょう。

私も休校期間に入った後、荷物を取りに来た6年生と話す機会がありました。その子は、「こんなふうに、急にクラスが散り散りになってしまうなんて寂しい……」としみじみ語ってくれました。最終学年の子どもたちも担任も、そんな悲しい思いをすることになったはずです。

教育現場の実態を踏まえていない

新型コロナウイルスによる感染症という危機を考えた時、休校で接触を減らすという対応を取ったこと自体は、致し方ないのでしょう。執筆時点でまだ感染者が報告されていないわが福井県を含め、休校を全国で一律に行うべきだったのか、その是非はあるのかもしれませんが、それは専門家の検証・判断に委ねるべきです。

ただし、一教師として気になってしまうのは、事前連絡なしの突然の休校要請という判断が、教育現場の専門知を踏まえたものだったのか、ということです。私が著書『先生も大変なんです』でも述べていることですが、多くの方は教師が何をしているのか、学校の仕組みの裏側でどんなことが行われているかよくご存じでないまま、教育について語ります。これと同様に、今回の休校要請やそれにまつわる対応が、学校の実態に十分配慮しないままに行われたものだったとしたら……。

もし、学校の業務や状況への理解や、休校に伴い想定される影響について知っていたら、ここまでの混乱を引き起こすような唐突な要請にならなかったのではないでしょうか。またそうしてもう少しでも猶予があれば私たち教師も、子どもたちの学びや精神的ケアに配慮したうえでの休校、と軟着陸できたのではないか。そのように考えてしまうのです。