(2)期限を設ける
交渉は時間があるだけ長びく。せっぱ詰まった状態で重要な決断をするのは気が進まないかもしれないが、期限は合意を促す健全な刺激となる。訴訟が裁判所の入り口で解決され、ストライキがえてして土壇場で回避されるのはけっして偶然ではない。そこまで行かなければ、長引く交渉の日々のコストが高いとは思えないのだ。裁判が始まろうとするとき、あるいは労働協約が期限切れになろうとするとき、人々はようやく現状の心地よさに浸ってはいられなくなる。このような瞬間を予想して、自分の優先事項をきちんと認識するとともに、コミュニケーションのチャンネルを常に開けておくならば、行動が必要になったとき、あなたは迅速かつ賢明に行動することができる。
終わりのない交渉にはまり込まないためには、交渉を始めるときに期限を決めておくのが効果的だ。自分が提示する案に期限をつけてもよい。ただし、期限つきのオファーは、人為的なプレッシャーを受けることに相手が反感を持った場合は裏目に出るおそれがある。
(3)変更を考慮に入れる
あらゆることをきちんとやったとしても、交渉が大詰めになってくると作戦や戦術を警戒する必要がある。弁護士が使う古典的な交渉戦術に、「合意に達したあとで、クライアントにそれを拒否させ、要求を引き上げさせる」という手がある。これは車のセールスマンの間でもよく使われる戦術で、上司と相談して戻ってくると、彼らは必ず要求額を引き上げる。
合意に達するときは、重要事項はすべて解決済みで将来の不意打ちはないということを確認しよう。握手をしたあとでも、その合意に対して社内の了解が得られなければ、相手はもっと高い要求を掲げて戻ってくるかもしれない(あなたのほうがその立場になることもある)。いずれにしても、一方的な譲歩をしないよう用心する必要がある。相手が新しい条件を求めてきたら、それに応じる余裕がある場合でも、あなたはそれと引き換えに自分に有利な変更を獲得するべきだ。さもないと、さらなる要求を助長することになる。