「子どもたちを取りこぼさない」国の意思

フランスの学校における道徳教育の詳細を見ていくと、長期化したストへの人々の反応も納得がいく。自分と異なる他者を尊重すること、それがフランスという国であること。彼らは学校という社会の縮図で、幼少期から教え込まれているのだ。

「それでも残念ながら、取りこぼされてしまう人はいます」

インタビューの最後に、前述の国家教育省の高官ジェフレイ氏は、固い表情で言った。

「どんな出自の人々でも、この土地に住んでいる長さとは関係なく、フランス国籍を持つ人がフランス人です。法の前では、誰もが平等……ではありますが、成功できない人々もいる。私自身パリの郊外育ちで、この目で見てきました」

社会から阻害される若者は存在し続け、経済面や機会面での格差は依然、大きな問題だ。だからこそ、とジェフレイ氏は、語気を強める。

「だからこそ常に、目標を設定し直す必要がある。取りこぼされた子どもたちを放置しないために、2018年の教育法改正では義務教育開始年齢を3歳に引き下げました。また義務教育終了後の16歳から18歳の若者に、就労していなければ研修・教育の機会を与えることを、自治体の義務としています。この年齢で職も所属もなくドロップアウトしてしまう青年が、7万5000人もいるからです」

前後に計5年間延長された教育の機会でも、最終目標は公教育と同じ「フランス市民を育てること」だ。

「自由・平等・友愛の理想に向かって、私たちはこうして、最前線を更新し続けます。私たちの国はもっと遠くまで、前進できる。そう信じて公務員になり、毎日、仕事をしているんです」

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