昨年末、フランスでは47日間も交通ダイヤが乱れ続けた。原因はフランス国鉄のストライキ。市民はたいへんな不便を強いられたが、ストを支持する声は多く、駅員を怒るような様子はみられなかったという。フランス在住のライター髙崎順子さんは「背景にはフランスの徹底した道徳教育がありそうだ」という――。
フランス全土で大規模ストライキが実施される中、旅行者で混み合うパリのリヨン駅(フランス・パリ、2019年12月20日)
写真=AFP/時事通信フォト
フランス全土で大規模ストライキが実施される中、旅行者で混み合うパリのリヨン駅(フランス・パリ、2019年12月20日)

過去最長ストでパリ市民の通勤通学は大混乱

フランスの12月は通常、心浮き立つ祝祭の季節だ。週末にはイルミネーションで輝く街へ繰り出し、家族で過ごすクリスマスのため、貯金をはたいて贈り物やごちそうの品を買いそろえる。ところが昨年は違った。12月5日、全国一斉に始まったゼネストで公共交通網がストップし、市民の生活に大影響を及ぼしたのだ。

原因は、エマニュエル・マクロン大統領が任期中の重要政策と掲げる年金制度改革法案。独特の年金体系を持つ鉄道・バス、学校、病院、文化施設などの42の関連職種を一般年金制度に統合する方針で、受給年齢の引き上げを始め、受益者にはマイナスな変化も多い。改革に反対する職種の労組が連携し、大規模なストとなった。

特に首都パリでは地下鉄や郊外列車に「運行ゼロ」の路線がいくつも発生し、数少ない運行車輌に乗客が殺到。通勤通学を大混乱させたストは47日間継続し、労組最強とも言われるフランス国鉄をして、過去40年間の最長記録を更新した。