78歳と高齢にもかかわらず人気があるのはなぜか

バーニー・サンダースは、現在、米大統領選の民主党候補指名を争っている有力候補の一人だ。4年前のアメリカ大統領選挙でも、ヒラリー・クリントンらと民主党候補指名を争った。年齢は78歳。高齢にもかかわらず人気がある。

12月19日、私は隣州ニューハンプシャーで開かれたサンダース支持者の集会を覗いた。エスコートしてくれたのは、筆者の高校時代からの盟友で、在米17年、現在はアメリカ国籍を持つハーバード大学の研究者である。

写真提供=井出明
2019年12月19日、ニューハンプシャー州で行われたサンダースの演説会の様子。

演説会の会場は「コミュニティカレッジ」だった。日本風に言えば「職業訓練を重視した短期大学」である。日々、実直に生きながらも、生活に悩む人々が集う場所としては、うってつけの施設と言える。

演説会の開始は19時。私は開場の17時半から現地にいたが、どんどん人が集まり、参加者は1300人ほど。会場は開始前から熱気を帯びていた。演説会では4人の支持者が5分ずつスピーチを行い、それから政治家たちが演説する。最後はもちろんサンダースの演説だ。終了したのは20時半ごろ、90分程度のプログラムだった。

年収880万円では「暮らしが成り立たない」

サンダースの演説もおもしろかったが、私が興味をひかれたのは支持者らのスピーチだった。1番手は黒人男性の高校教師。次はその教師の生徒である白人の女子高生。その次は高齢の白人男性で、最後は女性の市会議員。「バラエティに富んでいる」と感じた。

支持者らの主張の核は「生活の苦しさ」だった。真面目にコツコツと暮らしてきた人たちが、とにかく「いま困っている」ということを訴えている。これはアメリカで暮らしてみるとよく分かる。私の周りでも「困っている人」を多く見るからだ。

私がビザを申請するためハーバード大学に書類を提出した際、事務担当者から「研究費から滞在費への補填があるか」という質問があったり、「『帰国後も今の仕事がある』という書類を作ってもらえないか」というリクエストも受けた。

その背景を各所に聞いてみたところ、オバマ政権段階ですでにビザは厳しくなっていたものの、トランプ大統領になってさらにシビアになり、取りにくくなったそうだ。直接の労働ビザではない私のようなカテゴリーでも、潜在的にアメリカの知的労働者と存在が競合するため、アメリカ人の雇用を守るためにビザを厳格化しているわけである。

もちろん、申請書類に記した国立大学の准教授としての所得「年収8万ドル(約880万円)」は、ボストンおよび隣接都市の所得と比べて少なく、現実問題としてボストンではギリギリの生活となる。

後から知ったのだが、同業者のなかには、滞在期間中の家賃を上回る貯蓄の証明書を出すことになった人もいたという。また、日本人の「ポスドク」(大学院博士課程修了の若手研究者)がアメリカでビザを取得しようとしても、年収が4万ドル程度(約440万円)のため、州によってはなかなかビザが出ないそうだ。