原作そっくりな装丁・判型、並べて売れる工夫
JUMP j BOOKSの部数が特に跳ねるようになったのは、2005年の『D.Gray-man reverse』(原作:星野桂、著:城崎火也)以降のことだ。それ以前のJUMP j BOOKSは赤い色の背表紙で統一された新書判サイズの単行本だった。
だが『D.Gray-man』のノベライズでは赤背をやめ、カバーは全体が原作マンガと見まがうような装丁にし、書店店頭で並べて売りやすくした。これを機に、JUMP j BOOKSのノベライズは原作準拠の装丁が標準となった。
さらに集英社は小説版の発売日はジャンプコミックスと同じか翌月に設定。書店にはコミックスと小説を並べて2冊置ける面陳台を送り、いっしょに並べた方が売上が良いことを営業が書店に繰り返し繰り返し周知。これによって「j BOOKSはジャンプコミックスの隣に」という新しい“常識”を作っていったのだ。
マンガ家のアイデアを徹底して形にする
さらにJUMP j BOOKSはノベライズの「中身」の革新も行った。一般論として、マンガの小説版を原作ファンが敬遠し、不満を抱く理由は判型や装丁だけでない。当然本の中身にもある。
「マンガで読める話をただなぞっているだけでわざわざ文字で読む必然性がない」
「小説家が勝手に考えた原作無視のオリジナルストーリーなら読みたくない」
「キャラクターの口調が原作と違う! こんな行動はしない!」
「挿絵を原作マンガ家でない人が描いている」
「原作の先生が描いているが挿絵の枚数が少ない」
「絵が原作の使い回しばかり」
といった理由が代表的だ。そうなってしまうのはなぜか?
マンガ家はマンガを描くのが本業だ。なるべくそれに集中したいし、担当編集者もそうさせたい。すると、小説版に割く時間と労力が限られる。小説家の考えたプロットや原稿を原作者が何度もチェックし、絵をたくさん描き下ろすのは手間がかかる。しかも、それでたいして売れないとなれば、マンガ家や担当編集者が非協力的になってもおかしくない。
しかし、JUMP j BOOKSではマンガ担当と小説担当の別々の編集者が連携し、マンガ家のアイデアを最大限生かそうとする取り組みが行われている。
「週刊連載ではこれをやると順位が下がりそうだ」「膨らませると面白いが、脇道のエピソードなので連載のスピード感が落ちてしまう」といった理由でマンガ家がボツにしたネタを、小説担当の編集者がマンガ担当編集者にヒアリングして吸い出し、小説家につなぐ。一度はボツにしたアイデアをもとに打ち合わせを重ね、小説化する手法を確立した。