若い教師の学級が荒れやすい原因の一つでもある

少子化で子どもが減り、教師の数が減りました。しかし、部活動の数はあまり変わっていません。その結果、必要な顧問の人数は増えることになりました。そして深刻になったのが、半数以上の教師が自分の全く経験のないスポーツや活動の顧問を引き受けないといけなくなったことです。

江澤隆輔『先生も大変なんです いまどきの学校と教師のホンネ』(岩波書店)

生徒や保護者は、こうした事情はもちろんご存じありません。その結果、「うちの顧問の先生はテニスを知らない」「うちの子の部活動の顧問の先生は、タッチアップも知らずに野球部顧問をしているそうだ」と、このように言われてしまうわけです。

残念なことに、その部員が担当クラスにいた場合、本業である授業や学級経営にも影響します。「テニスを知らないからきっと授業も面白くないだろう」「野球を知らないんだから、きっと授業も大したことない」と、マイナスの先入観を持って授業に臨むことになるのです。

こうした影響で特に大変なのは、若手の教師です。往々にして初任者や若手教師は、部活動の希望が通らず、未経験の競技の部活動を任されることが多いのです。授業経験が少なく、まだまだ研修や教材研究が必要な若手であるにもかかわらず、未経験の部活を任されているために、「サッカーのことが分かってないんだから、授業も面白くないだろう」といった、先入観まで持たれてしまいます。若い教師の授業や学級が荒れやすいのは、まだ経験が浅いというだけでなく、この部活動でのミスマッチから来る生徒の不信感の影響もあるといえるでしょう。

意義はあるけれど、このまま保つのは限界

ここまでご紹介した通り、私は現在の部活動の制度には大きな問題があると考えています。

ただ、正直にいうと、私はそれでも部活動に大きな教育的意義があると感じている面もあるのです。授業中は積極的に意見を言ったり、参加したりできない生徒が、部活動になるとうれしそうに下級生に教えてあげたり、丁寧にお世話をしてあげたりしている……部活動の場で活躍し、輝いている生徒の姿を見ると、大変だと分かってはいても、「部活動っていいものだな」と感じるからです。

部活動が授業以外の活躍の場・成長の場を提供していることは確かです。そして、それを目の前で見ているからこそ、教師も部活動の場を提供したいと考えるのです。

とはいえ、こうした「ブラック部活動」を象徴として、厳しい学校の就労状況が明らかになりました。その結果、教員志望の学生は減りつつあります。2019年、自治体によっては採用試験の倍率は一倍台となってしまいました。すでに人材選考のプロセスとして、日本の教育の質が確保できない事態になっているのです。

部活動という制度は、いうなれば、無給の長時間労働でスポーツや文化を支える、というものでした。そこに意義があるとはいえ、このまま部活動を、そして学校教育を保つことができないのは明らかです。

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