「部活大好き教師」たちの本音

そんな「大御所」の前で、「部活動がつらい……」「勤務時間後のボランティアで成り立っている」などとは言いにくいものです。そして「若いんだから、部活動で生徒と一緒に汗をかくべきだ」と当然のように言われたら、よほどしっかりした気持ちを持っていないと、拒むことは難しいでしょう。

インターネット上では、教師の立場から「中学校では部活動顧問が授業や学級経営とセット。それが嫌なら小学校に異動するか、学習塾に勤めたりしたらどうだ」とする意見も散見されます。本当にその発言者が教師なのか定かではありませんが、実際にそう思っている教師がたくさんいることも、想像に難くありません。

「勤務時間外だから部活動は受け持たない」とは言えない

実際、こうした職員室の中で部活動に否定的な行動をすると、仕事をしにくくなる側面は否めません。

私たち教師は、他の先生と色々なチームを組んで仕事をしています。最もかかわりが大きいのが「学年会」。担任、学年主任、副担任を学年でまとめてそう呼び、週1回必ず会議をしたり、打ち合わせをしたりします。あるいは教科会、校務分掌でのチーム……多くのチームを組み、組織として学校を回しています。

ほかの教師との連携や協調が、仕事を進めていく上では欠かせないのが学校です。そうした場で「来年度は部活動を遠慮したい」とか「部活動がつらい……辞めたい」といった、ほかの先生との「協調性を欠く」ような発言はしにくいのです。

なぜなら、自分が部活を担当しなかったら、他の先生の負担が増えることは確実ですし、そのことで部活動以外の仕事に対して負の影響が及びかねないからです。「勤務時間外だから部活動は受け持たない」という正論があっても、本業に支障をきたすのであれば尻込みしてしまうのも頷けます。

同調圧力で断りきれない「サービス残業」

全国の教師の中には、部活動顧問を引き受けない、という決断をしたという例も聞きます。しかし結果として、周りからの同調圧力や職員室の雰囲気、「部活動をやりたい生徒の心をくみ取ってほしい」などと言われ、断り切れなかったという話がほとんどです。そもそも前述の「部活動の大御所」がいるような学校の場合、顧問をやりたくないけれど、同じようなことを言われたり、職員室の空気を悪くしたりすることを恐れ、あきらめて引き受けている教師もたくさんいることでしょう。

もちろん、介護や育児などを理由に、活動時間が短く、大会参加が少ないような文化部の顧問にしてもらうという要望は可能です。ですが、若手の教師、特に独身の男性教師にとっては、部活動顧問を断ることは難しいのではないでしょうか。若い教師が「部活動の指導ができてこそ一人前」「若いんだから、子どもたちと一緒に取り組まないと」と言われれば、職員室の同調圧力や雰囲気に呑まれて、引き受けざるを得なくなるでしょう。