このままでは「教育の質」が維持できない
社会の要請を受けて仕事量が増え、そしてその歯止めが利かない状況ゆえに、給特法制定当時は週2時間程度だった時間外労働は、現在その数倍、人によっては十倍以上へと膨れ上がっています。こうして、法律の制定から約50年を経て、教師の働き方の実態と給料がかけ離れる現状が生まれてしまったのです。
ある試算によると、日本全国の教師に適正な残業代を出そうとする場合、新たに年間9000億円から1兆円の財源が必要だと言われています。月あたりの金額で考えると約10万円、もし新任から定年退職まで勤めた場合、1人当たり数千万にもなります。そんな額の分をただ働きする中、仕事はさらに増加しつづけているのです。
こうした中、精神疾患で休職する教師の数は年間5000人を超え、また教師を目指す学生の数は減って、2019年には倍率が一倍台の自治体すら出てくるようになりました。
教師の労働環境の悪さが明らかになり、教師の数も減っていく中、公教育の質をこのまま維持することができるのでしょうか。「定額働かせ放題」の状況に手を打たずしては、その見通しは暗いと言わざるを得ないでしょう。