「女装を楽しめない」理由を取り除く社会を目指して
女装を足がかりに、ここまで性の多様性について整理してきた。本稿のサブタイトルに最後にあらためて答えておこう。「女装はLGBTに含まれますか?」。
結論としては、「女装とLGBTには直接的な結びつきはない。しかし、両者が結びつけて考えられがちな点にこそ、現代社会に根深く残る、性の多様性への誤解を見て取ることができる」ということになる。
当たり前のことだが、女装は悪いことではないし、女装に基づく芸や笑いがあること、あってよいことも、たとえばマツコ・デラックスさんを見ていればわかるだろう(おこのみであれば、たしかに女装は「市民権を得つつある」と言ってもよいかもしれない)。ただし、おそらく私たちは、女装をなんの弊害もなく存分に楽しめるほどには、性の多様性に対するみずからの偏見や誤解を乗り越えられていない。必要なのは「女装を楽しめなくさせる理由を、私たち自身の手でひとつずつ取り除いていく」ことなのだと、私は思う。