良い講師に出会えるまで「5回」は覚悟したほうがいい
さらに、親子関係をスムーズにする能力を持っているかも大きい。中学受験は子供がまだ幼いため、親のサポートが不可欠だ。小学生とはいえ、5、6年生になると思春期に差しかかり、受験で親子関係がギクシャクしてしまうことがある。こうした時、第三者の大人が入ることで、家庭の風通しをよくする効果があるのだ。
近頃の中学受験で一番問題なのは、子供の能力を超えた学習をやらせようとする親が増えていることだ。“わが子のために”と始めた中学受験で、「どうせ僕は勉強ができないんだ」と子供の自己肯定感が下がってしまったり、親子関係が悪くなってしまったりすることほど不幸なことはない。その手助けに、家庭教師は一役買っている。ただし、それは“よい家庭教師”を選べたときに限る。
こう言うと、「なんだ、自分を売り込んでいるだけじゃないか」と思われてしまうかもしれないが、もちろん、そんなつもりはない。ただ、家庭教師の見極めはとても重要であることは頭に入れておいていただきたいと思う。良い講師に出会えるまで、5回までは何人かの体験授業を受ける覚悟が必要だ。大人である講師は、大人に対してはきちんとしたところを見せるが、子供には地をさらけ出してしまうところがある。だが、子供はそういうものを敏感にキャッチする力を持っている。子供が「イマイチ」と言ったら、やめておいたほうがいい。
自分を犠牲にしてまで、わが子に投資する必要はない
中学受験には多額のお金がかかる。塾代に家庭教師代と、親の不安を解消したいと思ったら、いくらあっても足りない。
中学受験に熱心な家庭で、気になる家庭に出会うことがある。受験以外のことにまったくお金をかけていないのだ。
ある家庭で、図形が苦手な子に断面図を教えたいと思い、母親に包丁を借りた。ところが、その包丁がまったく切れないのである。見ると、安価な包丁であることがすぐ分かった。
「100均のコンパス」を使わせている家も、子供の成績が伸びにくい。安価なコンパスは針が刺さりにくく、正確な円が描けないからだ。子供の教育費にお金をかけるのなら、文房具は上質なものを買ってあげてほしい。コンパスなら製図に使う本格的なものを与えたほうが伸びやすい。「たかが文房具、されど文房具」なのだ。
子供の教育費にすべてを費やすのではなく、親も自分自身を高めるためにお金を使った方がいい。高額な家庭教師代を払うために、自分の服は何年も買わないというのは、あまりお勧めしない。親の我慢は必ず、子供に伝わる。親がくたびれた顔をしていては、子供はイキイキとした表情で勉強に向かうことはできない。
親も本を読んだり、コンサートや旅行に行ったりして、人生を楽しんでほしい。身近な大人である親が楽しそうにしていると、子供は「大人になるっていいな」と思い、将来の夢を持つようになる。同じお金を使うにしても、わが子に生きるお金と生きないお金があることを知ってほしい。