自衛隊が自国民を海上で救出、那覇港へ戻ってくる姿を見たかった

日本の自衛隊が一番活動をやり易いのは、日本の領海内においてだ。ゆえに、ウエステルダム号を日本の領海内まで呼び込んで、自衛隊に日本人を救出してもらう。陸上自衛隊出身の佐藤正久参議院議員は、海上でのレスキューはいくらでもできるし、ヘリコプターを使えば何の問題もないと言っていた。そのような訓練を積んでいるのがまさに自衛隊なんだろう。

それこそ、ヘリコプター艦載機の「いずも」にでも出動してもらい、ウエステルダム号の近くに横付けし、ヘリコプターによって日本人5人を救出し、そして那覇港に戻ってくる姿を見たかった。

(略)

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

繰り返し言う。国家・政治家がやるべき究極の使命は、「自国民保護」だ。

日本の領海内なら、日本の主権を行使できる。しかし、公海上だとただちに日本の主権を行使できない。国際ルールでは、船の船籍がある国(旗国)が主権を行使する。ウエステルダム号は、オランダ船籍でアメリカの会社が運営する船だ。

であれば、日本政府はアメリカ政府とオランダ政府と話をつければいいだけで、ここは西側諸国同士として話をつけやすかったと思う。日本の外務省の頑張りどころだ。

そしてウエステルダム号から日本人5人を、ヘリで救出する「だけ」では、やはり批判を浴びるだろう。だからそこは政治的配慮、知恵が必要だ。日本人5人を救出するのと引き換えに、ウエステルダム号が必要としている物資を、たっぷりと供与してあげればよかった。まさに「政治」だ。

自衛隊がウエステルダム号から日本人を救い、那覇港に戻ってくる。そんな様子を国民がしっかりと見ることによって、日本政府への信頼感が高まる。それが国家というものだ。

ところが、今回、日本政府は、ウエステルダム号内の日本人を太平洋に放り出した。ウエステルダム号がどこに寄港できるかわからないなかで、日本人5人を太平洋にほっぽり投げたのである。

この罪深きことを国会議員は認識しているのか!

国会議員は口を開けば「日本国民のために!」といつも言うが、ちゃんちゃらおかしい。上っ面だけじゃなく、本気でパッションをもって日本国民を守る気概を示せ!

(略)

(ここまでリード文を除き約2800字、メールマガジン全文は約1万900字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.188(2月18日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【フェアの思考(6)】今後のための検証・肺炎感染「クルーズ船」に日本政府はどう対処すべきだったか?》特集です。

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