増大する不確定要素
2018年以降、中国経済は減速が鮮明となっている。すでに中国は世界第2位の経済規模を誇る経済大国だ。中国経済の動向はアジアや南米の新興国の消費や投資、エネルギーや鉱山資源への需要にも大きく影響する。中国経済が減速する中、海外からの来訪客数がこれまでのペースで増加するか否かは見通しづらい。それは、オリエンタルランドが業績拡大を目指すにあたっての不確定要素といえる。
中国経済の減速は、わが国の消費者心理にも無視できない影響を与える。近年、わが国の景気は工作機械や工場の自動化(ファクトリーオートメーション)関連の機器を中心に、中国の需要に支えられてきた側面が大きい。中国経済の減速は、わが国の企業収益にマイナスの要因と考えられる。それは、所得の伸びを抑制するなどして、家計の支出意欲を低下させる可能性がある。
また東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの大人と中高生の入場チケットが、2020年4月から値上げされることも無視できない。利用者が最も多い有効期限が1日の「1デーパスポート」は、18歳以上の大人が7500円から8200円に、中高生と高校生が6500円から6900円に上がることになっている。
さらに、春節の連休を控え、中国で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大したことの影響も軽視できない。すでに、米国が中国本土への渡航中止を勧告するなど、世界全体でヒト・モノ・カネの動きに無視できない影響が出ている。
例年、春節の連休前後に移動する人の数は30億人に達するといわれる。中国経済の成長とともに観光などの目的でわが国に訪れる中国人の数は急増してきた。オリエンタルランドにとって、春節と新型肺炎の発生が重なり、中国だけでなく世界全体で人の往来が制限されてしまった影響は無視できないはずだ。
重要取り組みとして注目される“ダイナミック・プライシング”
2月上旬の時点で考えると、オリエンタルランドの業績がどのように推移するかは見通しづらい。時間の経過とともに新型肺炎の感染が抑制される可能性はある。同時に、ワクチンの開発やその実用可能性など、不透明な点も多く先行きは楽観できないだろう。
不確実性が高まる中でオリエンタルランドが成長を目指すためには、新しいアトラクションの設営やイベントの運営などを通して、国内を中心に人々の関心を獲得する必要がある。同時に、混雑の緩和などを進め、より訪れやすい仕組みを整備することも欠かせない。
その一つとして、一律料金ではなく、需要の動向にあわせてサービスなどの提供価格を変動させる、“ダイナミック・プライシング(変動価格制度)”が注目される。その仕組みは人工知能(AI)を用いて需要の動向を分析し、需要の変動にあわせて価格を変えるというものだ。
需要が増えるとサービスなどの価格を引き上げ、反対に、需要が減少すると料金が引き下げられる。すでにテーマパークや音楽のライブ、プロ野球のチケットなどでダイナミック・プライシングが導入されている。