「仕事もろくにできないバカばっかり」とバブル世代を目の敵に
しかし、一方では、危うさも抱えていると言うのは前出の飲料メーカーの人事担当者だ。
「彼らが悪いわけではありませんが、目先の業績目標に追われながらも好業績を残し、管理職になったのは自分が人一倍努力したからだと自負している人も多い。その彼らが特に目の敵にしているのがバブル世代です。『自分たちは厳しい選考を経て入社したのに、あいつらはたいした苦労もせずに入ったし、仕事もろくにできないバカばっかりだ』と言うことを聞いたことがあります。自分たちはバブル世代より優秀なんだという意識が強い。でも管理職になった以上、年上の部下であるバブル世代をうまく使いこなさないと仕事が回りませんが、たまに年下の部下とトラブルを起こすことがあります」
確かに今の40代半ばの課長職だと、部下が10人いれば2~3人の50代の部下を抱えていても不思議ではない。たとえばこんなケースもあるという。
「役職定年になった元管理職が氷河期の課長の部下として異動してきたのですが、元管理職には『大所高所からアドバイスをお願いします。現場を回り悩んでいる若手がいれば話を聞いてあげてください』と言ったそうです。元管理職はたいした仕事も与えられず、何も期待されていないことにムッとしたそうです。それでも自分が閑職に置かれたのはいいとしても、その分、若手の社員が忙しく働いているのを見て課長に『A君は仕事で困っているようだ。もう少し若手の指導をちゃんとやったらどうだ』と言った。すると、課長は逆ギレしたのか『いいんですよ、僕には僕のやり方があるんですから』と言い返したらしい。しかも後で、その課長がA君に『あの先輩(元管理職)がお前のことを仕事ができないやつ、と言っていたぞ』とウソの話をしたそうです。それ以来、元管理職は若手からも敬遠されるようになりました」(飲料メーカー人事担当者)
同期が少ない中、「管理職になった自分は偉い」と勘違い
課長がプレーヤーとしていくら優秀であっても、これでは職場は回らない。年配の社員を遊ばせる一方で、若手に仕事を押しつけるようでは課の生産性も上がらないだろう。もちろん氷河期世代の管理職に限った現象ではないだろうが、前出の教育コンサルタントはこう指摘する。
「同期が少ない中で管理職の地位を築いた自分を偉いと思っている人もいます。管理職になっても目先の業績だけが大事という人もいます。氷河期の中には、部下の育成や指導をろくにせず、年上の部下を終わった人と見下し、自分の仕事のテリトリーを減らし、自分のやりたいことだけに集中したいという自己中心的な傾向があります」
こうした人物は管理職にするよりは、ひとりのプレーヤーとして会社に貢献してもらうほうが得策だろう。しかし「全入時代」を迎えつつある中、選別できるほど余裕のある企業も少ないかもしれない。