「どうしてこんな人が課長なのか」という40代管理職に増えている
大手企業の新任管理職研修を長年手がけている人材教育コンサルタントもこう危惧する。
「バブル期入社組の社員のうち課長以上の管理職になれるのは多くても5割程度でした。しかし、バブル組が役職を降りると、代わって氷河期世代が課長候補になりますが、絶対数が少ないのでその世代の7~8割が課長に昇格することになります。以前であればとても昇進できなかった人たちを上げざるをえなくなっています」
その結果、どうなるのか。
「そうした企業の新任管理者研修の講師を務めているとよくわかるのですが、どうしてこんな人が課長なの、という人が結構います。管理職の質が悪くなってきているのは間違いありませんし、管理職のレベルダウンは今後も進行するでしょう。今後、管理職の質の低下を防止するには外から人材を確保するしかありません。ただし、大手企業は中途採用で採れるかもしれませんが、準大手や中堅企業になると難しい」
実際に氷河期世代の管理職不足をうかがわせる調査もある。エン・ジャパンが転職コンサルタントを対象に実施した「2020年『ミドルの求人動向』調査」(2020年1月17日発表)によると、66%の転職コンサルタントが2020年は35歳以上のミドルの求人募集が増加すると予測。
「役職別」で最も多かったのは「課長クラス」の73%、次いで「部長・次長クラス」の57%という結果になっている。その理由として「就職氷河期と言われる時期に採用を控えていたツケが今になって出てきており、管理職を任せたい世代が不足している」との声が上がっている。
精神面にタフで、臨機応変に対応できる人もいる
もちろん氷河期世代には優秀な人材がいないわけではない。氷河期をくぐり抜けて入社したものの、1990年代後半以降の経済の右肩下がりの中で会社の業績も低迷し、中高年社員のリストラを目の当たりにした人も多い。その一方で厳しい業績目標が課され、達成に向けて必死に取り組み、生き抜いてきた世代である。
同じエン・ジャパンの「『就職氷河期』実態調査」(2019年12月26日発表)によると、「氷河期世代だったからこそ身についたもの」の第1位は「精神面でのタフさが身についた」(47%)、次いで「どんな局面でも対応できる臨機応変さが身についた」(34%)が多い。
また、回答者の声として「『自分の専門性を磨いていかないとまずい』という危機感が他の世代よりも備わっており、結果的に良かったと思う」(39歳男性)。あるいは「就職氷河期であろうとなかろうと、自分の努力次第で道は切り拓くことはできるので、一概に不幸な世代とは言えない」(43歳男性)という声もある。
それなりに苦労を背負いながらも自信にあふれている様子もうかがえる。