事業者と家主で認識にズレがある
この調査からも、高齢者が賃貸業界から歓迎されていないことが浮き彫りになりました。急速に増加する高齢者。おのずと借りる層も高齢化になり、現在の入居者の年齢層も、高くなっていくことは間違いありません。それでも「できたら貸したくない」、そう思っている不動産会社・家主が大半です。
積極的に高齢者を受け入れていると回答した事業者は、たったの7.6%。そうではない理由は「大家の理解が得られないから(得られていないから)」が51.5%。その他「自社にとっての手間暇がかかるから」と「自社にとってリスクがあるから」を合わせると25.0%にもなります。
一方、家主の方は17.9%が、積極的に受け入れています。これは事業者より10%ほど高い数字です。その理由は滞納さえなければ退去が少なく、「長期安定経営になるから」が83.0%。続いて「社会貢献になるから」が58.0%、「空室だと困るから」が53.4%でした。
家主の方が賃貸経営が事業である以上、避けられない、もしくは高齢者世帯の諸事情により貸してもいいと思っているようです。
一方受け入れに関して、消極的である・受け入れていないでは、家主の方は合わせて26.7%。これに対して事業者の方は36.3%でした。やはり家主より事業者の方が、高齢者の受け入れに対して消極的でした。
この数字からすると、事業者は「大家の理解が得られないから」という理由で貸したくないようですが、家主側とは少しズレがあるようです。
孤独死で具体的にどんなトラブルが起こったのか
自主管理の家主以外、直接トラブルの対応をするのは管理を担当する会社。そのため実際に高齢者によって日々の迷惑を被るのは、事業者だからでしょう。家主は事故物件となり金銭的な被害を受けない限り、日々の対応は管理会社にしてもらえるので、空室よりはいいと考え高齢者に部屋を貸す。一方の事業者は、同じ管理手数料で手間暇かかる高齢者を避けたいので、消極的にならざるを得ないということでしょう。
また管理会社からすると、家主を説得して高齢者に貸して、何か大きなトラブルになったときに、自分たちの責任を問われるのが怖いので、窓口の段階で断るということもあるかもしれません。
事業者側が主張する大家の理解を得られない理由は、「孤独死の恐れがあるから」が89.3%といちばん多く、手間やリスクも「孤独死した場合の対応」が87.8%と最も高い数字となっています。人は必ずどこかで死ぬ生き物ですが、やはり貸す側にとって「孤独死」は最大のリスクとなっているようです。
●遺品整理に多額の費用と時間がかかってしまった(家主負担)
●死臭や痕跡が残り、次の借り手が見つからず建物取り壊しとなった
●生活保護受給者だったが、亡くなった日からの家賃補助は打ち切られ、室内の家財道具撤去費用も負担してもらえなかった
●遺品の引き取りにこない、連帯保証人(遺族)は無視
●病死であっても近隣から耳に入るので募集で告知すると入居申し込みがない
●病死判定だと賃料減額が発生しても保証人に責任を問えない(家主負担)