「根拠がない中での大決断」を誰が下すか?
この大阪府の一斉休校については事後検証がなされた。その検証結果は、大阪府、兵庫県の一斉休校によって、新型インフルエンザの感染が一気に収束したということだった。
ただし、致死率40%と言われていたこの新型インフルエンザは、実は通常のインフルエンザと変わりがないことも判明した。ゆえに、この程度の感染で大阪府下を一斉休校する必要もなかった。
しかし感染で大騒ぎになっていた当時、感染者数や感染の広がり方、そして新型インフルエンザの毒性についても、ほとんど情報がなかった。何もわからない中で、ただ「感染すると大変なことになる」「致死率は40%かもしれない」という情報だけが入っていた。
学校を一斉休校にすると、子供たちの学ぶ権利や、親御さんたちの働く権利に影響を与えてしまう。
通常の行政では、何か政策を実行し、とくに住民の権利に影響を及ぼすようなときには、しっかりした証拠と理屈をもってやるのが一般的だ。だから僕が一斉休校を提案した時にも、役所組織は、「まだそこまでの状態ではない」「一斉休校にする根拠がない」「もう少し様子を見て感染が広がってから判断してもいいのでは」という声が強かった。
しかしそれでは、パンデミック対応として遅い。WHOの幹部が言っていたように、「感染が広がってからでは遅い。感染が広がる前に自宅待機を命じる」ことが必要である。
そうであれば、ここでは「根拠がない段階での大決断」が必要になる。
これはまさに政治家の仕事だ。一斉休校や人の活動を停止してみて、実はあとから、そこまではやらなくてもよかったということもあろう。その時には住民から批判が出ることもあろう。そういうときに責任を引き受けるのも政治家の仕事だ。
1月26日のフジテレビ系「日曜報道THE PRIME」では、これまた感染症の専門家としてメディアに引っ張りだこの岡田晴恵・白鴎大学教授と共演したが、岡田さんはメイク室で「大阪の一斉休校は効果的でした」と言って下さった。
(略)
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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.185(1月28日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【フェアの思考(3)】中国・新型肺炎「封じ込め」で考える政治家と行政の役割分担》特集です。