CCSは1つのテクノロジーではなくて、いろいろな方法の総称である。たとえば、石油増進回収法(EOR)のように利益を生む場合もある。EORは、油田から簡単に取り出せる石油をすでに取り出したあと、その油田からさらに石油を回収する方法である。
油田に蒸気や天然ガスを圧入するのが一般的だが、これらに代えてCO2を注入して石油を取り出すこともできる(CO2圧入法)。石油が取り出せ、かつCO2を封じ込めることができるので一石二鳥である(*)。ただ、日本にはほぼ油田がないのでEORは直接的には関係ない。
見込みのある方法としては海底貯留がある。海底にCO2を注入して貯留する方法である。貯留されたCO2が海中に出てくる量とスピードをモニターする実験が北海で行われている(*)。2006年には海洋汚染の防止を定めたロンドン条約が改正され、CO2廃棄物等の海洋投棄が例外とされ、CO2の海底貯留に対して法的手当てがされている。
また別の方法としては地下貯留がある。日本でも2020年内の実用化を目指し、苫小牧でCCSの大規模実証実験が行われており,2019年11月には30万トンの圧入に成功している(*)。
CCSによって貯留できるCO2は日本で1461億トンとされる(*)。日本の年間CO2排出量はざっくり12億トンなので、コストの問題を考えなければ120年分以上貯留できる計算である。
地球温暖化対策は“総力戦”
スーパーコンピュータ「京」によるJAMSTECと東大のシミュレーションによれば、地球温暖化によって台風の発生個数は減るものの、強い台風の割合は増え、降雨量は増える。そして、強風域の範囲は拡大するとのことである(*)。2018年の台風21号、19年の台風19号を思い起こせば、温暖化の影響は肌感覚で感じられるレベルになっている。
もう温暖化対策は待ったなしである。ここで原発をやめ、石炭火力をやめるなど、とりうる手段を減らしていけば、温暖化対策に取り組む手を自ら縛ることになってしまう。コストの安い石炭火力があれば、コストが浮いた分、温暖化対策の研究開発に回すこともできよう。
温暖化対策は総力戦である。メリットとデメリットを考えつつ、やれることは全部やってみるべきであろう。