搾取のしわ寄せ「ブラックバイト問題」

フランチャイズの中ではコンビニが代表格であるが、フランチャイズを利用した多店舗展開は、小売、飲食、介護、学習塾等、あらゆる業界に見られる。いずれも本部が多額のロイヤリティをオーナーたちから搾り取る仕組みがあることは共通している。

この過剰な搾取のしわ寄せを受けるのがアルバイトであり、いわゆる「ブラックバイト問題」が発生している。ブラックバイトとは、ブラックバイト問題を専門に扱う労働組合であるブラックバイトユニオンの定義(広義)によると「学生の無知や立場の弱さにつけこむような形での違法行為が当たり前となっているアルバイト」のことである。

残業代不払い、パワハラ・セクハラ、退職妨害等が横行する点は今までのブラック企業問題と共通する。

私が実際に担当したある飲食店の事件では、休みなしでの4カ月連続勤務の強制や、残業代不払い・暴行・脅迫が発生していた。条件が悪く、みな辞めていってしまうので、おとなしく従順なアルバイトに狙いを定め、暴行・脅迫で縛り付け、辞められないようにしていたのである。

被害者は毎日のように暴行や暴言を吐かれ、「辞めたら家族に数千万円の損害賠償請求をする」等と言われていた。その被害者の前にも、似たような立場に追いやられたアルバイトがいたが、結局もたなくなり、店を辞め、大学も辞めてしまったという。

暴行、脅迫、正常な思考力が奪われ…

被害者は社外労働組合に駆け込み、店を辞めることができたが、そうしていなければ、どうなっていたかわからない。アルバイトのせいで授業に出ることもできず、単位が取れていなかったからである。助けを求めなければ、大学を辞める羽目になっていたかもしれない。

「嫌なら辞めればいい」という考えは、被害の当事者ではないから言えることである。暴行・脅迫で正常な思考力を奪われる場合はもちろん、「お前が辞めたら店が潰れる。それでもいいのか」等と言われたら、心情的になかなか辞めることはできない。現在「退職代行」業者が流行しているのも、そういう心理を持つ労働者がたくさんいることを示している。

なお、法律的には、無期契約の場合、原則として2週間前に言えば辞めることはできる(民法627条1項)。有期雇用契約であっても、「やむを得ない事由」がある場合は、同様に辞めることができる(同法628条)。残業代が支払われず、長時間労働を強いられている場合や、パワハラ・セクハラの被害を受けている場合は「やむを得ない事由」があると言ってよい。

また、「辞めたら損害賠償請求してやる」という脅し文句は非常にポピュラーなものだが、損害賠償責任が認められる場合はまずないと言ってよい。辞めるだけで何か会社に損害が発生するなら、そのような脆弱な体制にした経営者に責任があるのであり、労働者側には何の落ち度も無いからである。