政府は恐ろしいと喧伝するメディアが、実は最も恐ろしい

ゴーン氏が国外逃亡をしたというのは、主権国家日本(日本政府)にとっては恥ずかしいことであるし、それにゴーン氏が海外から日本の刑事司法制度をガンガン批判していることについても、検察としては許し難いことである。もちろん僕も、ゴーン氏には日本の裁判を受けさせるべきだと考える。

ゆえに検察は、異例の情報発信を行っている。そして、どんどん発信すべきだと煽る国会議員もたくさんいる。

しかし、そもそも容疑者・被告人について捜査機関が、容疑(起訴)事実を主張し、それを立証することができるのは「法廷の場」においてだけだ。

国家機関は強大な力を持っている。情報収集能力も凄まじいものを持っている。そのような国家機関が、国民(外国人を含む)の容疑事実を、ルールも何もない中でどんどん発信することは危険極まりない。

だから近代国家は、刑事訴訟法という法律によって捜査機関ができることを厳格に定めた。容疑者・被告人には弁護人を置いてきっちりと反論できる機会を与えた。

このようなルールがあるのにそれを無視して、国家権力側が、容疑者・被告人の容疑事実を裁判外においてどんどん情報発信することはアンフェアだ。権力を持たない容疑者・被告人が裁判以外で自らの主張することは無制限だろうが、国家機権力である捜査機関側がそれを平気でやってしまう国は恐ろしい。

法務省としては、国外逃亡された経緯については説明責任を果たさなければならない。それは「なぜ国外逃亡されてしまったのか」についての法務省の反省の弁であり、今後の対策についての説明である。

もちろん、日本の刑事司法制度についてゴーン氏から指摘されたことについて、反論があればきっちり反論しなければならない。ただし、それは「日本の刑事司法制度に何ら問題はない」という今、日本政府がやっているような形式的な反論ではなく、本来目指すべき水準に照らして、その水準を満たしているのか、満たしていないならなぜ満たしていないのかについて、実質的に反論すべきである。

しかし、いくら情報発信をするからといって、ゴーン氏が有罪であるかのような情報を、裁判外において一方的に発信するのはフェアではない。

(略)