日本の弁護士人口は、15年前に始まった司法制度改革で大幅に増加したが、仕事がなく生活の苦しい弁護士も出現している。なぜこのようなことが起きたのか。長野県立大学の田村秀教授は「国や弁護士会は法曹人口を見誤り、『日本は弁護士が少ない』という思い込みがあった」と指摘する――。

※本稿は、田村秀『データ・リテラシーの鍛え方 “思い込み”で社会が歪む』(イースト新書)の一部を再編集したものです。

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司法試験「3000人合格」を目指してロースクールが乱立

2000年代の大学改革の中で混乱をもたらしたものの一つに、ロースクール(法科大学院)の設置があります。これは司法制度改革の一環として行われた、弁護士などの法曹人口拡大の要請にともなって作られたものです。アメリカの制度などを参考にして、大学院で2年または3年学んだ後に司法試験を受験するもので、当初は試験の合格率は80%程度と見込まれていました。

日本で最難関の資格試験とされる司法試験は、合格率がおおむね1%台から2%台で、司法試験予備校に行かないとなかなか合格できないことについて、各方面から弊害が指摘されていました。また、欧米に比べると人口当たりの弁護士数が大幅に少ないことも問題視されました。日本はアメリカの約20分の1、イギリスやドイツの約9分の1、フランスに対しても約4分の1という少なさでした。

昭和の時代には合格者数が500人前後だったものを、2010年ごろには3000人程度まで増やすことを目指して、鳴り物入りでスタートしたのが2004年のことです。

大学側も時代の流れに乗り遅れるなとばかりに、法学部がある大学はもちろんのこと、法学部がない大学でも大学院の設置が進み、結局74校のロースクールが誕生しました。国も規制緩和が叫ばれる中で厳しい審査をすることなく、基準を満たせばすべて認可するという方針で臨んでいたのです。