その後もロースクールは続々と撤退を表明し、国公立大学では島根大学が最初に募集停止となり、74校のうち、2019年時点で学生の募集を行っているのは半分以下の36校です。さらに、甲南大学では2020年度から学生の募集を停止することになっているので、ついに35校にまで減ってしまうことになります。

制度発足からわずか15年で半分以上の学校が潰れるというのは、前代未聞のことではないでしょうか。当然のことながら国公立だけでなく、私学でも多くの税金が投入され、校舎を建設したり、数多くの教員を採用したりしたわけです。

大学によっては、累積赤字が20億円に達したところもあります。ロースクールが不良債権と化してしまったわけです。これでは撤退の圧力が、大学の内外から当然のように湧き起こってしまいます。

ロースクールが発足したころには2万人ほどだった弁護士数も、今では4万人を超えるにいたりました。しかし、大量に弁護士が生まれたにもかかわらず、訴訟件数はほとんど変わらず、弁護士の世界も二極分化してしまっています。

仕事がなく、生活が苦しい弁護士の存在も明らかに

一般的には、弁護士は正義の味方という側面とともに、収入が高く生活が安定しているというイメージがあるでしょう。確かに大企業の顧問弁護士などはそうかもしれませんが、一方で生活が苦しい弁護士の存在もメディアによって明らかにされています。報酬があまり多くない国選弁護人のポストを求めて、行列ができるという都市伝説まがいのうわさまで流布しているくらいです。

それ以外にも、弁護士による犯罪、特に依頼人をだまして金品を横領するような事件が相次いで報じられたこともあって、弁護士という職に対する評価が以前よりも低くなったとこのような弁護士の社会的な存在価値の低下もあって、弁護士になりたいと考える学生の数は大幅に減少しています。

ロースクールに入ればすべての学生が合格できるわけではなく、予備試験というロースクールを経ないバイパスのような制度に優秀な学生が数多く流れ込んでいるということも、ロースクールの不人気に拍車をかけました。

このことは大学の法学部にも少なからず影響を及ぼしています。

本来、法学部を卒業しても、司法試験に臨む学生は一部で、多くは民間企業や公務員を志望しています。しかし、ロースクールの不人気はその前段に位置づけられる法学部全体の評価を下げることとなり、入学志願者も減少しています。また、ロースクールに多くの教員を奪われ、結果として十分な法学教育が行われない大学も出てきています。