一方で、「症例数はある程度多いに越したことはないが、多ければ多いほどよいかはわからない。順位にはあまりこだわらないほうがよいでしょう」(中川院長)と指摘する専門家も多い。治療結果が悪ければコンスタントに患者が集まってこないとはいえ、症例数だけでは治療結果の差はわからない。例えば、合併疾患が少ない人の手術を中心に200例実施したのと、進行して合併疾患の多い患者ばかり180例実施したのとでは、どちらの価値が高いか比べられないからだ。

「その患者さんにとってどの治療が最も適しているのか、内科医と外科医が合同で検討し『適応』を決めているかどうかが非常に大事」と、榊原記念病院の住吉徹哉副院長も強調する。

がん治療については、内科医、外科医、放射線治療医、病理医などそれぞれの専門家が診断内容や治療方針について話し合うキャンサーボードを設置することが拠点病院の指定要件になっている。

「この症例は手術ができるのか」「進行がんで高齢だが放射線がかけられるだろうか」「かなりがんが進行し家族は遠方にいる。このままうちの病院で治療を続けるべきか」――。キャンサーボードを最初に導入した癌研有明病院の「呼吸器キャンサーボード」を見学すると、約20人の医師たちが、電子カルテの画像や検査データを見ながら忌憚のない議論を展開していた。内科医、外科医、放射線治療医、病理医の垣根はなく、特に、担当医が判断に困るようなケースの検討には、ベテランの医師も中堅や若手の医師の意見に耳を傾ける。

がん、心臓病、脳血管障害、どの分野も一人の医師だけで治療できる時代ではない。場合によってはリハビリの専門家や看護師、ソーシャルワーカーまで、各分野の専門家が連携して治療にあたってくれるかどうかも病院を選ぶ際の重要なポイントだ。医療者と患者も人間同士なので相性もある。ランキング表を参考の一つに、自分にとってよい病院を選ぶようにしたいものだ。

※すべて雑誌掲載当時

(岩崎 隆=撮影)