控えめで、優しいのは元々の性格か
辻内とは取材の後、トークショーでも一緒になる機会があった。彼は控えめで、優しい男だった。登壇前、「緊張しますね、どうしたらいいですか」と不安そうな目でぼくを見た。スポットライトに当たることを避けているようにも思えた。それはドライチとしての期待に応えられなかった経験から来るのか、元々の彼の性格なのかは不明である。少なくとも投手のSIDを掴むことが出来なかったとは言えるだろう。
もっとも、彼が投手以外ならば成功したかというとそれも疑問だ。高校時代にあれほどの速球を投げられる若者を、投手向きではないからと配置転換出来る人間はいなかっただろう。そして、彼に打者としてのSIDがあるかどうか――。
好打者のSIDもまた特殊であるからだ。(続く)