最初からマリファナに関してはかなり詳しかった。当然、前からやっていたと思う。たとえば『アイソレイト』っていうオランダのハシシ、これは教会の中のラベンダーのお香のような強烈な匂いがする珍しいやつなんだけど、それも知ってた」
「ヘルタースケルター」は、彼女自身を演じた映画だった
高城と別れた沢尻が薬物中毒であることを知りながら、テレビ局や彼女と親しい映画関係者たちは、そのことを咎めたり、止めさせようとはせず、沢尻を利用し続けた。
沢尻と親密だといわれるファッションデザイナーや、沢尻が心酔しているイベンターの女性など、彼女の取り巻き連中は、クラブのVIP専用のスペースで、沢尻が薬物でハイになるのを笑って見ていただけだった。
沢尻が最高の演技を見せた映画に「ヘルタースケルター」がある。日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞したが、これは彼女自身を彼女が演じた映画だったのだから当然だった。
全身整形で完璧な美を手に入れたファッションモデル・りりこだったが、自分の美貌、作り物の美しさが失われることに対して激しい恐怖を覚えていく。
後輩の美しさに嫉妬し、彼女は自分の地位が揺らいでいくことに焦りを感じ、精神的におかしくなってドラッグに手を出していく。
会見の最中、彼女は突然ナイフを取り出し自分の右目を突き刺すのだ。
生身の彼女は目を突き刺す代わりに、逮捕されることを望んだのではないだろうか。今の弱い自分に終止符を打つには、それしかないと思いつめていたと考えるのは、彼女に甘すぎるだろうか。(文中敬称略)