また、新車はコスト削減のためグレードの低いタイヤを標準で装着している。クルマにうるさそうな客には、「せっかくのいいクルマなのに、このタイヤじゃもったいない」と気軽に声をかけると「実はそうなんだよ」と盛り上がる。通なら、わかっている店員のいる店で買いたがるから商売につながる。

つまり客に「なるほど」「あのスタンドに寄りたい」と思わせるコミュニケーション術だ。

「1つの店舗で年間4000本、5000本のタイヤを売る。昨年は1カ月で1000本という記録も出た」と西川は胸を張る。

1000本といえば、普通のスタンドなら1年かかる数字だ。

ガソリンを入れた客には「ウインドーウオッシャー液やラジエーター冷却液もタダですからどうぞ」と声をかける。それが修理や車検につながる。

細かいことをバカにしないのが西川のモットー。ガソリンをこぼした客がいても「セルフだから」と無視すればクレームになるが、「大丈夫ですか。こちらで手を洗ってください」と気遣う。「大事なのは勇気。相手の気持ちになって話しかけ、断られてもへこまない」。セルフでも客とコミュニケーションはできる。

「油が売れなければ、売れるものを売ればいい。相手の気持ちになって声をかければ商売につながる」。20年近い現場経験の自信が、そこにある。(文中敬称略)

※順位は『日経市場占有率2009年版』調べ

(大杉和広=撮影)