古いカーペットで、作業能力が著しく低下

まずは図Aを見てほしい。前出の村上氏らが20~40代の社会人を換気量が小さい部屋と大きい部屋に分け、論理系、暗記系のテストを行うと、なんと「換気量大」のほうが両テストとも5~9%も成績が良かったのだ。

「対象者は一級建築士の資格試験受講者、いわゆる勉学に対するモチベーションが非常に高い社会人のため、学習意欲の有無が測定結果に与える影響は小さいでしょう。また、受講者には室内の環境条件を調整していることを知らせず、先入観による影響を極力排除しました」(村上氏)

にもかかわらず、換気量「小」の条件から「大」にすることで、点数にすると論理系では4.7点、暗記系では6.4点も向上した。

基本的に、外よりも室内のほうが空気が汚れている。人間が“汚染源”で、その空気が滞留するためだ。代表的な空気の汚れは二酸化炭素。特に室内の人数が多いと二酸化炭素濃度は短時間で推奨濃度レベル(800~1500ppm)を上回りやすく、空気の質を低下させる。すし詰め状態で会議を行うと眠くなるのがいい例だろう。そこで定期的な「換気」で空気をきれいにすることが大切だ。

しかし、これから冬にかけて暖房をつけているときに換気をしすぎれば、コストがかかる。どの程度の換気を行うといいのだろうか。

村上氏、伊香賀氏らは戸建て住宅を対象に、1時間に換気した量に応じて「空気汚染による被害費用と冷暖房費用」を比較している(図B)。

たとえば図の「0.1」は1時間で室内の10分の1の空気を入れ替える、つまり10時間かけてようやく室内の空気が丸1回入れ替わるということで、これだと冷暖房のコストは少ないものの室内の汚染濃度が高い。「冷暖房費用」と「空気汚染による被害費用」を総合的に考えると、換気回数が1時間に0.5回、つまり部屋の空気を1時間に半分入れ替えるのが最も効率的という結果であった。浴室の換気扇を24時間付けっ放しにすると、1時間0.5回換気に近づく。

だが人の多いオフィスであれば、「1時間に2回程度の換気が必要」と、早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科の田辺新一教授は指摘する。

「我々が『知的生産性と疲労度』に関する研究を行うと、空気がよどんでいたり、高温環境下での作業は、脳内酸素消費量が多くなる。そして疲労感が増すことがわかったのです」