首都圏の人気私大が難しくなっている
平成最後に行われた2019年度入試を振り返ってみると、首都圏私大入試の難化が話題を集めた。これは文部科学省が2018年に続き、若者が東京へ一極集中するのを防ぐべく、東京23区の私大の定員抑制を打ち出し、さらに全国の大学を対象に入学定員厳格化を求めた結果である。
では各大学の入試状況は具体的にどうなったか。
2019年度を見てみれば、首都圏に位置する早慶上理(上智・東京理科)、MARCH(明治・青山・立教・中央・法政)といった上位人気私大の多くが合格者数を絞り、すでに難化傾向にあった2018年度より、さらに難しくなったとされる。
一方、そこからあぶれた受験生は、同じく首都圏に位置する人気私大である成成明国武(成城・成蹊・明治学院・国学院・武蔵)、日東駒専(日本・東洋・駒沢・専修)などに流れ込んだ。不祥事が続いていた日本大学などを除き、これらの大学の多くで受験者が増加、合格者は減少、という状況となっている。
つまり人気私大の多くが狭き門になったことで、実質競争率が上がり、入学難易度アップに結びついたわけだ。ただし、実際には併願率が高まると入学率が低くなるため、合格者を後から増やしたりする大学もあるなど、その傾向を分析するのはなかなか難しくもあるが。
指定校推薦に応募する生徒が増えた
ともあれ、こうした混乱した状況下で、今までなら模試の判定で合格圏内にいたような生徒が想定外の不合格となり、高校の進路指導の先生が慌てる、といった事態も多く見られたようだ。
また入試の傾向として、合格を確実にするべく、指定校推薦(大学が一定の高校を指定し、条件に合った生徒の入学を決める推薦制度)に応募する生徒が増えている、という情報もある。指定校推薦の対象は少人数だし、比較的、求められる成績水準が厳しい。その代わり、要件を満たしたうえで応募すれば、ほぼ合格するのがその特徴である。
これまで指定校推薦に応募する受験生というのは、一発勝負の試験が苦手な、しかし普段の成績がよい女子生徒などが多いという印象が強かった。しかし2018年くらいからは男女問わず応募者が増え、今まで志願者がほとんどいなかったような大学でも、校内枠の埋まる高校が目立ってきたようだ。
指定校推薦で受かった生徒は、そのほとんどが合格した大学へ入学する。そのため指定校推薦の人気が高まり、入学者が増えると、大学側は入学定員厳格化のために一般入試の合格者を削り、より定員を絞り込まざるをえなくなる。
定員抑制と入学定員厳格化が文部科学省の思惑どおりに、大都市の大学の志望者を減らし、地方の高校生が地元に留まる結果に至ったかどうかは検証が必要だろう。