中国警察が「暴徒鎮圧訓練の映像」を公開した狙い
産経社説の続きを読んでみよう。
「さらに中国は、先鋭化するデモの一部を中国自ら鎮圧に乗り出す可能性を示している。香港駐留の中国軍や、隣接する広東省深セン市に集結した中国警察による暴徒鎮圧訓練の映像が公開された」
「中国当局者は『しかるべき懲罰が必ず下る』と警告した。非常事態を想定した法律の規定があるとはいえ、正規軍の治安出動や中国警察の越境派遣は、香港の『一国二制度』の崩壊につながる。許される選択ではなく、恫喝(どうかつ)は怒りや不信感を増幅させるだけだ」
恫喝は怒りや不信感を増幅させるだけとの指摘はうなずける。
しかし軍や警察の出動が一国二制度の崩壊につながるというくだりが、よく分からない。中国は一国二制度を維持するために鎮圧訓練の映像を公開するなどして脅しをかけているのだ。
中国は市民に軍隊を差し向ける国である
最後に産経社説は3つの主張を並べる。
「30年前、世界は北京の天安門広場で中国民主化の叫びが銃口で封じられる瞬間を目撃した。中国の力による弾圧を再び香港で見ることのないよう、国際社会は中国に強い懸念を伝えるべきだ」
その通りである。国際社会が厳しい目を中国政府に向けるべきだ。
「同時に、先鋭的な実力行動に走る香港の学生らは冷静になってほしい。この数日のデモだけで148人が逮捕された。量刑の重い暴動罪も適用されている。中国の武力介入を招きかねない冒険主義は高度自治の自殺につながる」
この香港の学生たちに向けた主張も、もっともである。学生ら香港の民主主義を守ろうとする市民は十分、気を付けてほしい。中国は市民に軍隊を差し向ける国なのだ。
「なぜ林鄭氏は改正案の即時撤回を明言できないのか。すでに表明した来年7月の実質廃案が信用されないのは、中国の顔色ばかりを窺う同氏への不信と同根だ」
繰り返すが、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官は、中国政府の傀儡以外の何者でもないのだ。