鉄壁の少年法。大騒ぎになることは目に見えていた
リーダー格のA18歳は、私立高校を一年の三学期で中退。暴力団事務所にも出入りし、母校の中学校の窓ガラスを割って補導されるなどで「保護観察処分」の前歴があった。
B16歳は、中学校でAの二年後輩だ。工業高校を一年の二学期で中退。バイクの無免許運転で「保護観察処分」の前歴がある。女子高生の監禁場所となったのは、Bの自宅だった。両親は共産党員で、弁護士を通じた謝罪コメントを『赤旗』にだけ発表している。
サブリーダー格のC17歳もAと同じ中学校で、一年後輩。私立高校を一年の二学期に退学している。バイクの無免許運転で「保護観察処分」の前歴あり。
D17歳も、Aと同じ中学校の一年後輩で、工業高校を一年の一学期で中退。自宅で暴れて「保護観察処分」を受けている。
4人とも高校中退後は職やアルバイトを転々とし、地元では有名な手の付けられない不良グループだった。
当時の少年法はまさに鉄壁で、今では想像もできないくらい厳しく守られていた。週刊誌が実名を報道しても罰則こそないとはいえ、大騒ぎになることは目に見えていた。法務省は必ず問題にするだろうし、良識派や人権派といわれるメディアから袋叩きにあう事態も容易に想像できた。
「加害者の名前も公表せよ!」の意味
もちろん花田さんも少年法について学び、実名報道がどれだけハードルの高いことか充分に理解していた。その迷いが、「加害者の名前も公表せよ!」というタイトルに表れている。歯切れのよさで知られた花田さんのいつものタイトルなら、「加害少年の実名を公表する」とか「実名を明らかにする」と言い切るはずだ。「公表せよ!」では、誰に向かって言っているのか判然としない。
タイトルの校了は記事よりも先だから、記事で実名を報じても報じなくても通じるタイトルになっている。いま改めてこのタイトルを見ると、ギリギリまでゲラを目の前に広げて熟考していた花田さんの胸中が読み取れる思いがする。
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読者はどう受け止めたか
実名報道から約1カ月後の5月18日号に、読者からの投稿を集めた「実名報道 私はこう考える」を掲載した。そのいくつかを紹介する。
マスコミも誰も、善人ぶってはっきり言わないけど、奴らは全員40日かけてなぶり殺しにすべきです。これ以上ない地獄を味わわせてやるべきです。本当に悔しくて涙が出てきます。奴らにも、奴らを許す世間にも。
正直言って、こんな事を考えたりするのは好きじゃないです。夢を食べて生きていたいし、何も知らないで楽しく生きていけたらと思っていました。そんな私がこんなふうに手紙を書き、先週は「性暴力を許さない女たちの会」という集まりにも行ってきました。それほど大きなショックだったのです、この事件は。私は今、独身ですが、将来男の子を産むのが怖い。ちゃんと育てる自信がないのです。(大阪府)〉