この国の言論・表現の自由は「窒息寸前」
中止が決まったのを聞いた時、私は、週刊朝日が掲載した佐野眞一の筆による橋下徹・大阪府知事(当時)批判騒動を思い出した。
自分の出自まで暴く連載を開始した朝日に対して、橋下は激怒し、親会社の朝日新聞に猛抗議した。
私は一読して、ここまで書く覚悟があるのだから、週刊朝日は、当然、橋下の抗議も想定済みで、第2、第3の矢を繰り出してくるのだろうと思った。だが、朝日と佐野は、なすすべもなく橋下に謝罪し、朝日新聞出版の社長は辞め、編集長も更迭されてしまった。
私見だが、今のこの国の言論・表現の自由は、狭まっている、不自由という段階ではなく「窒息寸前」だと思う。
そんな事例は枚挙にいとまがないが、最近ビックリして、椅子から転がり落ちそうになった報道を一つだけあげておく。
「長崎県佐世保市で4日に開催された『原爆写真展』の後援依頼を市教育委員会が断っていたことが、関係者への取材で明らかになった。同時に実施する『ヒバクシャ国際署名』活動が『政治的中立を侵す恐れがある』と判断した。主催団体は『核廃絶の署名活動のどこに政治的中立の問題があるのか』と反発している」(毎日新聞8月5日付)
「報道の自由度ランキング」は日本67位、米国48位、韓国41位
アメリカは9・11が起きて、「愛国者法」をつくりメディアを沈黙させたが、この国は、そんな法律をつくらずとも、ほとんどのメディアは権力に逆らわずに沈黙するか、権力側のいいなりになって恥じることがない。
国境なき記者団が毎年発表している「報道の自由度ランキング」で、この国は今年67位である。アメリカは48位、韓国は41位だ。
安倍政権になってからズルズルと下がっているが、私は安倍の強権政治のためだとは思っていない。われわれ一人一人に、言論・表現の自由を守ろうという強い気持ちがないからである。これは日本国憲法と同じで、命を懸けてわれわれが勝ち取ったものではないからだ。
日韓関係が最悪の今、慰安婦像を展示すればどうなるかぐらいは、津田をはじめとする、これを手掛けた連中にもわかっていたはずだ。それをあえてやるからには、それ相応の覚悟があったはずだったと思いたい。なかったらバカの集まりである。