しっかり「鏡」を見る人は徳が高まる

威張ったり、他人の意見を聞かないようになったりしてしまう人は、他人に自分を認めさせるために、自分から「私は偉いのだ」と激しくアピールして、かえって他人からうとまれてしまうところがあります。

茂木健一郎『ど忘れをチャンスに変える 思い出す力』(河出書房新社)

意欲を持ち、過去の成功体験にこだわらず、自分がどういう状況にいるのか、どういうふるまいをしているのか、周りはそれをどう思っているのかを鏡に映すように把握して、「こういう行動をするとこういう結果になるのだ」と、しっかりフィードバックすると、脳は、悪い結果につながった行動を今後は抑え気味にして、いい結果につながった行動は強めようという形で学習し、徳を高めていきます。

しっかり鏡を見ることができれば、「マイナス」は刈り込み、「プラス」を強めて円熟していくのですが、徳が高まっていかない人は、鏡をうまく見ることができていないのです。今の現実世界に対する意識と、過去の経験に対する意識とを広げていくことが、徳を高めることなのです。

「円くなること」こそが個性を作ること

それぞれの人が自分で経験して、反省して、学びを続けて、円くなるのですが、円くなるとはまた、誰かと同じになってしまうことではありません。

何もかも受け入れて、にこにこして、穏やか。——そんなのは個性をなくすことだ、突出したものもなく、誰も彼も似たようなものになる、と思うかもしれませんが、本当は、円くなることこそが個性を作ることなのです。自分の中の記憶という宝物だけは、他の人が完全に同じものを持つことができません。

それを頻繁に思い出して、自分のやり方で長年耕すならば、あなたは誰とも違う、真の意味で個性的な人間になるのです。

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