日本人の意識や働き方を同時に変えていく

第1に、なぜ外国人か、どのような役割を担ってもらうか、を明確化することである。日本総研のアンケート調査では、外国人の活躍度合いと採用・活用理由の関係をみることができる。それによれば、「日本人労働力が集まらない」や「労働コストが節約できる」という消極的な活用理由の場合、外国人の活躍が「期待外れ」のケースが多くなっている。その一方で、「外国人ならではの業務」「グローバル化を展望して組織を活性化」といった積極的な理由の場合、活躍が「期待以上」となっているケースが多い。

第2は、外国人を「成長する人材」として、長く働いてもらうことを前提にすることである。そうなれば、人材育成のインセンティブが強まることになるが、われわれの実施したアンケート調査でも、研修プログラムに積極的な企業ほど、外国人の活躍が「期待以上」となる割合が高くなっていることが確認できた。こうして長く働いてもらうことを前提に人材育成に取り組めば、帰国しても「日本シンパ」となり、日本企業の海外事業にとっての支援者にもなってくれるであろう。さらに、日本を本気で気に入り、会社の中核的業務に携わるようになれば、特定技能2号、あるいは就労在留資格を取得して定住し、会社のコア人材として活躍してもらうことも展望できる。

第3は、外国人が日本社会に溶け込むよう、生活面の支援を重視することである。この点についても、日本総研のアンケート調査で興味深い結果が得られている。外国人従業員の生活支援として、特に何も行っていない企業の場合、外国人の活躍が「期待外れ」のケースが多いが、「社宅の提供」「マナー教育」「地域との交流促進」を行えば、「期待以上」の活躍となるケースが高くなることがみられた(図表1)。

第4は、日本人の活用と同時に進めることである。「安価で使い勝手のよい」社員が国内で採用できなくなったから外国人を採用するという考えでは、早晩立ち行かなくなることはすでに述べた通りである。国内には女性や高齢者をはじめ、未活用人材はまだまだ多く存在する。労働力が希少になる局面では、働く人々の生活上の制約を考慮しつつ、働き手の都合に配慮しながらその能力が十分に発揮できる職場づくりが必要になる。そうして国内にある多様性を活かす職場づくりをすることが、実は価値観の異なる外国人材の能力を活かす条件でもある。

第5に、日本人の意識や働き方を同時に変えていくことである。外国人材の能力を引き出すには、職場の在り方が制度面で変わるのみならず、働く人々の意識や行動も変わる必要がある。外国人と協働していくには、日本特有の考え方や慣習をわかりやすく説明するほか、場合によっては日本的なやり方自体を見直していくことが必要である。それは日本人にとっての新たな発見や発想につながり、閉塞感の強い今の状況をブレークスルーする好機ともなるであろう。

山田 久(やまだ・ひさし)
日本総合研究所 理事/主席研究員
1987年京都大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。93年4月より日本総合研究所に出向。2011年、調査部長、チーフエコノミスト。2017年7月より現職。15年京都大学博士(経済学)。法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科兼任講師。主な著書に『失業なき雇用流動化』(慶應義塾大学出版会)
(写真=iStock.com)
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