なぜ泉佐野市は「金券」に目を付けたのか
読売新聞の社説(5月16日付)は「ふるさと納税制度が新しくなる。再スタートを機に、善意の寄付で地方を元気づける本来の狙いを浸透させたい」と書き始める。だが、「善意の寄付」という文言を使うところは、「寄付とは、見返りを求めないもの」と指摘する朝日社説と五十歩百歩である。善意の寄付などいまの景気が良いとは言えない経済状況ではなかなか出て来そうもない。
読売社説は大阪府泉佐野市を批判する。
「泉佐野市は、18年度の寄付額が前年度の3.7倍の500億円近くとなった。一般会計当初予算の約516億円に迫る規模だ」
「『閉店キャンペーン』と称し、返礼品に加えてインターネット通販『アマゾン』のギフト券を贈った。金券目当ての寄付を募るのは、制度の目的を明らかに逸脱している。税収を奪われた他の自治体の不満も大きいはずだ」
なるほど、金券目当ての寄付金の募集は問題だ。泉佐野市はなぜ、金券に目を付けたのか。総務省はそこを追及すべきだった。読売社説はこう主張する。
「自治体に求められるのは地域の魅力をアピールする努力である。独自の政策や、地域作りの工夫を競い合い、賛同する寄付を呼び込む。そうした健全な仕組みに発展させることが大切になる」
「地域の魅力」「アピールする努力」「独自の政策」「地域作りの工夫」などいずれも肯定できる言葉ではあるが、各自治体が豪華な返礼品に頼らずに寄付を集める方法について、もっと具体的に議論する必要がある。
これでは自治体の自主財源確保は鈍くなるばかり
ふるさと納税制度において自治体の自由な競争を認めたうえで、過度の返礼品を抑制する方法もあったはずである。
たとえば総務省の自粛要請に従おうとしない自治体に対してのみ、ペナルティを課すやり方だ。
総務省は許認可権を握った。6月からは、ふるさと納税を受けられる自治体を指定し、返礼品を「寄付額の3割以下の地場産業」に限定できる。これでは自主財源を確保しようとする自治体の自立した動きが鈍くなるばかりだ。