文字通り「進むも地獄、退くも地獄」の野党

いずれにしても野党側は苦しい選択を迫られる。表向きは同日選を歓迎するような立場を見せてはいるが、本音では回避したいのは明々白々。参院選の候補者調整もままならないのに、衆院選も同時に行われるとなれば、野党共闘の隊列を組むのは不可能に近い。野党内で解散の可能性を高める不信任決議案の提出を見合わせようという意見が出る可能性がある。

しかし、その場合は「解散が怖くて不信任決議案の提出をやめた」という「弱腰」批判をまともに受けることになる。不信任決議案の提出を巡って野党内で足並みが乱れることも予想される。菅氏の本当の狙いは、そこにあるのかもしれない。野党は、文字通り「進むも地獄、退くも地獄」だ。

GDP速報値はプラスだったが「内需の弱さ」は顕著

安倍政権は今、「アベノミクスは機能しているが、米中の貿易戦争などの不安定な国際情勢の中、増税は好ましくない」という前提で消費税増税の見送りの検討を進めている。

5月20日発表された1~3月のGDP速報値は、前期比0.5%増とプラスだったが、内容を分析すると、設備投資と個人消費は低調。GDPを押し上げたのは、内需の弱さを反映して輸入が減ったことが最大要因という状況だった。

当初方針通り消費税増税すると断言する材料にはならない。増税を先送りする決断をした時は、衆院解散の流れは止まらないだろう。

慎重居士・岸田氏も「同日選の雰囲気は感じる」

慎重すぎて面白みがないという評価が定着している自民党の岸田文雄政調会長も同日選について「そういった雰囲気は感じている」と、踏み込んだ発言をし始めた。

共同通信社が5月18、19日に行った電話世論調査では47.8%が衆参同日選を「行った方がいい」と回答。「行わない方がいい」の37.2%を上回った。永田町の空気も、世論も同日選容認に傾いているようだ。

そこに、菅氏の発言により(形式的ではあるにせよ)野党の出方が注目されるようになった。6月26日の会期末を巡り、与野党の複雑な心理戦が続くことになる。

(写真=時事通信フォト)
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