成果を「強み」として競うのは際限がない
さらに、「強み」は残酷です。「強み」で勝負すると自分より強い人が出てきたら負けるので、不安は常につきまとうからです。
「定年になりましたので引退します」という横綱はいません。そう、「強み」は、自分よりもっと強い人が現れたら負けるのです。なぜなら、強みの価値は相対比較で決まるからです。ライバルは社内だけとは限りません。社外にもあふれているのです。
都道府県チャンピオンでも日本チャンピオンと比べられると不利でしょう。日本で1番でもアジアなら。世界なら。とにかく上には上がいるものです。
また、強みは永遠に保証されるものではありません。毎回トーナメントで勝ち上がるようなものです。圧倒的な強さがあっても、未来永劫(えいごう)続くとは限りません。強みで争うと果てしない厳しい戦いになるのです。
「同期で売上1番」でも会社全体では何番なのか? 業界や市場全体の中で先輩や後輩たちとガチで争い続け、勝ち続けるしかありません。強みを生かしたパーソナルブランディングは、圧倒的な強さをキープし続け、アップデートし続けることが好きでたまらない人にしか通用しません。
普通に会社に勤めて仕事をしているだけでは、他を圧倒するレベルの強みを勝ち取れる機会は少ないものです。実際、あなたも「強み」を生かしてキャリアプランを考えて行き詰まってしまったことがあるのではないでしょうか。普通の人がブランディングをするなら「強み」を基本にするのは危険なのです。
では、何を武器にすればいいのか。それは「持ち味」です。
職場の人からの「感謝の声」を集めてみる
先ほどの本のタイトル例では、内容を意識すると差がつきませんでしたが、「渋沢栄一が教える~」とその本独自の「持ち味」を打ち出した結果、記憶に残りやすくなるタイトルになったのと一緒です。
「持ち味」を知るにはどうしたらいいかというと、あなたが普段お仕事をしていて、「どんな人」から「どんな『ありがとう』の声」をもらっているのかを集めると分かります。同じ経理の仕事をしていても、
・「正確で」ありがとう
・「気が利いて」ありがとう
・「速くて」ありがとう
・「みんなを引っ張ってくれて」ありがとう
など、その人の持ち味に合わせ、「ありがとう」の声は違います。
頼まれる仕事も「急ぎが多い」「ドラフトで経営会議用にまとめてほしい」など、あなたの持ち味に合わせた傾向があるはずです。
そこが、あなたの売りになるのです。「強み」で団子状態から一歩抜け出る基点になります。「ありがとう」の声が、あなた独自の持ち味であり「提供価値」になるのですが、ここで注意が必要です。