「バングラデシュ アパレル」と検索してみると……

グローバル化が進んだ時代のメリットの一つは、情報も手に入れやすくなったことだ。インターネットに言葉を打ち込むだけで、これまで知らなかった国々の現実のことも、知ることができる。

仲村和代、藤田さつき『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社)

試しに、「バングラデシュ アパレル」とグーグル検索してみると、NGOなどのサイトで、現地の人の暮らしのことや、労働環境について知ることができる。もう少し詳しく知りたいと思えば、スタディツアーなどの形で現地に行くこともできるだろう。さらに、私たちがどう向き合えばいいかについても、様々な提案がなされ、議論がされている。

技術の革新を人類にとってプラスのものにするか、マイナスのものにするかは、使う側の意識に左右される。一度に大量にものを作ることができる技術。作ったものを運ぶ輸送力。人やものをつなげるインターネットの力。人類の知恵によって生み出された技術をどう生かすかも、人類の知恵次第だ。

そのための一歩が、知ることだ。目の前にある「安い服」は、どうやって生み出されているのか。買われることもなく捨てられてしまう服は、その後どうなるのか。自分が知った後は、誰かに伝えてみてもいい。そこから、一緒に何かできることはないかと考えてみてもいい。

知ろうとする人が一人増え、さらに変えようと一歩踏み出す。それが少しずつ増えれば、いまの方向性は変えられる、と信じることは、あまりに楽観的すぎるだろうか。

でも、そうすることでしか、変えることはできない。大量廃棄社会の現実を変えられるのは、私たち一人ひとりなのだ。

「いいものを、安く」ではなく、「いいものを、適正な価格で」。それが、これからの賢い消費者の姿だ。

仲村和代(なかむら・かずよ)
朝日新聞 社会部記者
1979年、広島市生まれ。沖縄ルーツの転勤族で、これまで暮らした都市は10以上。2002年、朝日新聞社入社。長崎総局、西部報道センターなどを経て2010年から東京本社社会部。著書に『ルポ コールセンター』、取材班の出版物に『孤族の国』(ともに朝日新聞出版)がある。
藤田さつき(ふじた・さつき)
朝日新聞 オピニオン編集部記者
1976年、東京都生まれ。2000年、朝日新聞社入社。奈良総局、大阪社会部、東京本社文化くらし報道部などを経て、2018年からオピニオン編集部。近年は、消費社会や家族のあり方などを取材。取材班の出版物に『平成家族』(朝日新聞出版)など。
(写真=iStock.com)
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