これは必要な武器と戦術を与えず社員を戦場に駆り出すようなもので、成果が上がらないのも当然だが、「できなきゃ会社に居場所はないよ」と解雇をちらつかせながら叱責されることは珍しくないという。上司の叱責がパワハラに発展し、さらに追い詰められるケースも多い。

不況が深刻化する中、肉体的、精神的に追い詰められるケースが増えることは避けられないと思われる。しかし、過酷な職場だからこそ休めない。「休むなら辞めろ」という会社もある。復帰できない、という不安もあろう。しかし、過重労働の果てには、重度のうつ病、そして過労死というリスクがついて回る。

神経質な人だけがうつになるわけではない

「うつ病は『神経質な人がなりやすい』と誤解している人もいるが、誰でもなる可能性がある。性格によってかかりやすいうつ病の種類が違うだけです」(野村教授)。しかもうつ病から自殺に至ってしまう可能性は決して低くはない。

どんな職場、性格の人でもうつ病や自殺に追い込まれる可能性はあり、そのリスクが今後高まっていくことは確実だろう。その現実に直面した私たちはどうすればよいのだろうか。

「うつ病は社会システム全体で考えるべき問題なのに、現在はそうなっていない。月並みな言い方かもしれませんが、危ないと思ったらいち早く医師の診察を受け、休養をとるしかありません」(野村教授)。

もはや、自分の身は自分で守るしかない時代ということだ。