さらに荒川氏は「消費は『コト消費』の次の段階、精神価値としての『エモ消費』に進みつつある。その中心となるのが主にソロ生活者」と分析する。荒川氏がいうエモ消費の「エモ」とは、エモーショナル(感情的なさま・情緒的なさま)の略だ。

「“エモい”という言葉があるんですが、これには『心が動いた』『心に刺さった』という意味合いだけではなく、『ロジカルに説明できないけれど満たされる』という精神的な充足感を含みます。モノやコトは手段にすぎず、この“エモい”感情で心を満たすという精神価値を求める消費が『エモ消費』です」

実際、どのようなビジネスがあるのか、例を挙げてみよう。

(1)アイドル商法
アイドルグループ「AKB48」が代表例。ファンは同じCDを複数枚購入するが、買っている本人はいたって幸せ。彼らが買っているのはCDというモノではない。投票や握手という体験だけでもない。その消費を通じて、「ああ、僕は役に立っている」という自己の社会的役割そのものを買っているといえるのだ。

(2)クラウドファンディング
2016年に大ヒットした映画『この世界の片隅に』は、クラウドファンディングによって生まれた。3374人が支援し、約3900万円の資金が集まった。1万円以上支援すれば、エンドロールに名前が載るという権利が付く。完成した映画のエンドロールには2000人以上の名前が並んだ。支援した人はSNSで映画の魅力を拡散し、ヒットの後押しまで。「一緒に映画を作り、育てる」という喜びは、「疑似的な子育て」に近い感動といえよう。

(3)オンラインサロン
月額会員制のオンライン上のプロジェクト型のコミュニティ。堀江貴文氏などの成功しているオンラインサロンに共通するのは、未完成で提示し、会員が活躍できる余白を用意している点だ。いうなれば、会員自身が動かなければ何も完成しない。だからこそ、会員一人ひとりが自分の社会的役割を実感することができ、それが大いなる精神的充足を生んでいる。

(写真=時事通信フォト)
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