1杯2200円のラーメンは吉と出るか凶と出るか

試作品づくりの日々が始まった。まずは土瓶蒸しをイメージし、干し松茸の戻し汁を従来のスープに合わせた。メンマの代わりに、戻した干松茸を。和歌山のぶどう山椒を散らして、ライムを絞る。見た目はいかにもおいしそうだが、どうも納得がいかない様子だ。

【大西】「ごちゃごちゃ乗せると松茸の良さが消えるし、足し算しすぎた感はありますね……」

妥協は失敗のもと。自分を信じてひたすら試行錯誤を続けていく。201日目の「シーズン2」スタートまであと2日のタイミングでアイデアがひらめいた。ワンタンで松茸を包み込めば香りが“でしゃばらない”のではないか。幼い頃好きだった母親お手製のワンタンスープから着想を得た。

とはいえ、松茸はアメリカでなじみが薄い食材。果たして受け入れられるのか。価格も課題だった。干したものでも松茸は高級食材だ。結果、1杯20ドル、日本円で約2200円のラーメン「鶏と松茸のタブルスープ」が完成した。吉と出るか凶と出るか。

店内に飛び交った「WOW!」の声

<2月8日 オープン201日目>

狙いは当たった。一口食べるなり、「WOW!」と驚いてくれたのは、いつも3杯ペロリと平らげる常連客だった。

【客】「きのこの風味がすごく気に入ったよ。MATSUTAKEだったかな?」
【客】「レベルが高い。すごく濃厚だ。大金を払う価値があるよ」

店内には何よりうれしい「WOW!」が飛び交う。こうしてシーズン2は、いくつもの笑顔と共に幕を開けた。

【大西】「安心しました正直。この緊張感を保っていくぞっていうそういう気持ちですね」

一期一会にかける“気迫”が、この男の隠し味だ。

シーズン2は笑顔とともに幕を開けた(写真提供=毎日放送)
「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。MBS動画イズムで無料見逃し配信中。過去の放送はこちら。https://dizm.mbs.jp/title/?program=jounetsu
大西益央(おおにし・ますお)
ラーメン店主
1976年大阪生まれ。2007年に大阪市鶴見区にラーメン店「鶴麺」をオープンし、2010年に2号店「らぁ麺クリフ」(現在は「Tsurumen」に改名)を開店。2店を大阪屈指の人気店に育てた後、2018年4月に米・ボストンで「Tsurumen Davis」を開店。家族は妻と13歳長女、5歳長男。「5年後には店を閉めるか譲るかして“さすらいのラーメン職人”としてまた別の街で店をオープンしたい」と語る42歳。
(写真提供=毎日放送)
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