シンガポールのライドシェアカンパニーと提携

――コネクティッドも含めた車の機能が進展した結果、実際にメンテナンスが増えたという例はありますか。

【友山】はい。グラブというシンガポールに本社がある会社をご存じですか。東南アジア全体で1日400万ライドの稼働がある域内最大のライドシェアカンパニーです。

グラブに所属するドライバーの3分の1は、自分の車を持たずに仕事をしているんです。そこがウーバーとは違いますね。まだ自分の車を持っていない人が多い地域なんですね。

グラブはドライバーに数万台の車を貸し出して、売り上げのなかからレンタル料を回収しています。それもまたグラブの収入になる。

トヨタはグラブと提携していることもあって、何万台も使っていただいていますが、シンガポールのグラブに使われているトヨタ車にはすべてDCM(通信端末)がついていてコネクティッドになっています。車の稼働状況、状態、ドライバーの運転サービスの品質までわかります。

――シェアサービスの車ですから、一般の車よりも稼働率は高くなる?

【友山】ええ、グラブの例でいえば、車の稼働率は一般の車の7倍から8倍になっています。

生産性4倍以上のメンテンナンスとは

――なるほど。確かに、外を走り回って稼がなきゃいけないからですね。

【友山】一般の車の稼働率はおよそ4%とされています。96%の時間は車庫に寝ているわけですね。ところが、グラブの車は30%以上。一般の車よりも走っているから6週間に一度はメンテナンスしなきゃいけない。

グラブとしてはメンテナンスの時間を短くしたい。メンテナンスの品質を上げて、車が故障するのを避けたい。そうしてメンテナンスにかかるコストも安くしたい。

彼らは従来の4倍くらい生産性が高いメンテナンスを必要としていました。

そこで、グラブの車をメンテナンスするため、トヨタはカーディーラーのなかに専用ラインを作りました。トヨタには「トヨタ生産方式」という生産性を向上させる仕組みあるので、それにのっとった専用ラインを地元のボルネオモーターズの修理ラインに入れたのです。

現在、ボルネオモーターズでは1500台のグラブに所属するトヨタ車をメンテナンスしています。だいたい30分で1回のメンテナンスが終わってしまう。他のディーラーだと半日から1日はかかるでしょうね。