オペレーターサービスを「レクサス」に標準搭載

【友山】ただし、車載機を開発したのはいいけれど、通信速度が遅かった。またまた苦労しました。それがだんだん進化していって、2005年に日本で「レクサス」をデビューさせた時に、他の高級車と差別化するために、コネクティッドの役割のひとつであるオペレーターサービスを標準搭載したのです。

――トヨタコネクティッドは車とつながっているけれども、乗ってる人ともつながっている。そして、その象徴がオペレーターサービスだとも言えますか?

【友山】そうですね。私たちはヒューマン・コネクティッド・サービスと言っています。トヨタのコネクティッド・サービスの裏には心通う人間がいます。代表的なものがオペレーターで、各オペレーターは直接、お客様と話して、お客様の要望を実現する。

そして、心が通う人間とはオペレーターだけではありません。メンテナンスをするディーラーの人々、車の状態を常にモニターしているスタッフ、事故に遭ったら、警察に連絡したり、さらには保険の適用まで手配する保険会社の人間。乗っている方の安心を見守るのは心が通じ合う人間しかできないと思っています。

――乗っている方とすれば、欲しいのは安心安全です。近頃は「あおり運転」の問題もあるし、何かあってもいいように、見守ってほしいと思っています。

モビリティカンパニーに変革の時

【友山】私たちの目標は究極の安心を提供すること。もともと、コネクティッドにはふたつの柱があります。

ひとつはお客様の究極の安心です。しかも、それをタイムリーに提供する。安心が欲しいのは困っている時です。つながっていれば、困っていることが何かがおおよそつかめます。ジャストイン・タイム・サービスをお客様に提供する。時々刻々変わる、お客様の状態、車の状態に合わせなければいけない。限りなくリアルのサービスを強化して、お客様にお届けする。

もうひとつは車の開発から製造、販売、アフターサービスまでの一連のビジネスの戦闘能力を上げるためのコネクティッドです。

社長の豊田はカー・カンパニーからモビリティ・カンパニーに変革すると言っています。変革するための鍵がコネクティッドなんです。新しいトヨタをつくるうえでの原動力になるもの。そういう意味ではトヨタのコネクティッドは単なる車の技術ではなく、お客さまの安心につながり、さらに、モビリティの未来につながるものです。

――一般のコネクティッドの捉え方とはずいぶん違いますね。一般にはスマートスピーカーが車内にあるというイメージの方が強いのではないでしょうか。

【友山】そうかもしれません。バーチャルの車載情報サービスだと思っている方は多いでしょう。

たとえば音声認識のAIのエージェントがいます。「ハーイ」というと答えてくれる。スマホのコンテンツが車の中でも見られます。音楽が聴けますとか……。

もちろん、そういうことも大事なんですが、私たちのコネクティッドは範囲が広く、先を見据えているというと、自慢になってしまうかな。