一度でも使ったら、もう元に戻れない

――わかりました。では、乗ってる人にとって、いちばんコネクティッドが有効というか、あってよかったと思うのは、どういう時ですか?

【友山】それはやっぱり、その人、その人によって違うのですが、知らず知らずのうちに、コネクティッドの恩恵を受けているケースがあります。つながっていることでソフトウェアがメンテナンスされていたり、地図データが更新されていたり。

もちろん、あとはリアルなオペレーターサービスです。一度でも使った人は「もう元に戻れない」と。連絡してもらうだけでなく、例えば、車の状態の異変を感じたら、お客さまが乗ったとたんに、オペレーターが連絡する。非常に人気が高くて、人数がだんだん足りなくなってきていますね。

保険もコネクティッド専用のものを用意しました。当社とあいおいニッセイ同和損保さんとて開発した新しい形の保険。「つながる保険(トヨタつながるクルマの保険プラン)」は、非常に好評です。この保険は運転のマナーがいいと、保険料が安くなる。だいたい契約した80%以上の人が、運転マナーがよくて、割引を受けています。事故率は3割も低い。事故率が下がるっていうのは、ユーザーにとっていちばんいいことだし、保険会社にとってもいい。社会にとっても、うちにとってもいいこと。

実は国内だけでなく、シンガポールのグラブもこの保険に入っています。すると、運転マナーがよくなり、事故が減りました。グラブはこの保険のおかげで、運転品質が上がり、事故が少なくなったことで喜んでいます。

「つながらなかったら、レクサスじゃないだろ」

――最後に、コネクティッドの、今いちばんの問題点とはどういうところでしょうか。

【友山】いちばんの問題点はつながらない時間が生まれること。

先日、電波障害があって、オペレーターサービスにつながりにくくなった日があったんです。

すると、お客様から苦情が入りました。ある方はこう言われたとのこと。

「いつも車を発進させてから、オペレーターさんと話して、カーナビに目的地を設定してもらっていたんだ。それができないじゃないか」

オペレーターとはつながるのですが、カーナビのデータが車まで届かなかったんです。

「つながらなかったら、レクサスじゃないだろ。もう、いらない。この車を返したい」

その時、本当にわかりました。つながる車がつながらなくなったら、車じゃないんだなって。

(文=野地秩嘉 撮影=上野英和)
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