巡礼は世界共通の人間的な文化
お遍路で歩く道は様々だ。周囲が開けた平坦な道路もあれば、足が痛くなるような険しい山道もある。私も足の裏が痛すぎて、お遍路をやめたくなる瞬間が何度もあった。それでも踏ん張って、次のお寺へと気合で進み続けた。
あるお寺で、四国遍路のボランティアをしている方と出会った。話を聞けば、定年退職後に地元の四国のために何かできることはないかと、四国遍路に来る旅行者の支援をしているそうだ。
「こんにちは。四国お遍路は初めてですか。お作法はわかりますか」
先述のとおり、勉強不足の私にはありがたい。お言葉に甘えて、お寺のお参りの作法を学ぶことができた。言われて初めて知る作法が多くあったので、初めてお遍路をするときは、お参りの仕方を人に教わったほうがいい。
さて、そんなボランティアの方に、最近のお遍路事情について伺ってみた。
「最近は外国人のお遍路さんが特に多いんですよ。実は巡礼というのは世界中にあるんです。たとえば、スペインのサンティアゴ巡礼やイスラム教のメッカ巡礼があるでしょう。国が違っても巡礼はする。言ってみれば、巡礼は人間的な営みなのかもしれないですね」
確かに外国人のお遍路さんはよく見かけた。
「ただですね、四国お遍路は外国人に優しくないんです。一番は宿の問題。サンティアゴ巡礼の場合だと1泊2000円もしないんです。でも、日本の場合は安くても5000~6000円かかっちゃう。だから、お遍路さんのためにも、最近増えている空き家を活用して、何とか安く泊まれる場所をつくろうという活動もしているんです」
そのボランティアの方は、現役時代より定年後の今のほうが生きがいを感じるという。仕事とは何なのだろうか。
四国遍路とは、弘法大師(空海)にゆかりがある四国の88カ所の寺院を巡拝することをいう。札所(寺院)は1から88まで番号が振られ、番号順でも反対から回ってもよい。逆に回ることは「逆打ち」と呼ばれ、死者がよみがえるとも言われる。お遍路は徒歩のほか、レンタカーやバスなどで回ることもできる。札所では、スタンプラリーのように、御納経(御朱印)がもらえ、御朱印ブームの影響や、あるいはパワースポット巡りとしても、国内外の観光客から人気を集めている。