人間関係でストレスがたまる、仕事で疲れ切った、健康が心配……、こういったイライラや不安に漠然と悩まされていた。日常を変えたい、毎日を明るく過ごしたい、人生を楽しくしたい、そんな思いで生まれて初めて四国に旅立った。
初めての四国で、いきなり恥をかく
「こんにちは。おひとりですか?」
見るからに1人で歩いているお遍路さんと出会っても、こう尋ねるのはご法度だ。
今回初めてお遍路を体験した私も、大きな荷物を背負って急坂を登ってくる1人の外国人とすれ違うとき、ついうっかり「おひとりですか」と話しかけてしまった。
彼はイギリスから来たそうだが、見るところ周りに誰もいないのに、英語でこう返事をされた。
「ノー、2人です」
どこからどう見ても1人だったので不思議に思ったが、彼は言葉を続けた。
「弘法大師さまと2人です」
私はお遍路早々、恥をかいてしまった。「旅の恥はかき捨て」ではないが、弾丸で四国に来たとはいえ、勉強不足で外国人からお遍路について教わるとは、日本人としてばつが悪い。
素直に恥を認めて反省し、彼に教わったのだが、お遍路は1人で歩いていても常に弘法大師がそばで見守りながら一緒に巡礼してくれるものなのだ。頭にかぶる菅笠や巡拝バッグなどにも「同行二人」と記されているとおりだ。また弘法大師は、巡礼者が手にしている金剛杖に宿っているという。なるほど、そう思って杖を見れば、なんだか不思議なパワーを感じる気がする。