「国語」でも「貧困」「格差」問題が頻出した

そして、この傾向は社会だけではない。国語でも同じだ。学習院中等科では、格差社会を論じた書籍(鬼丸昌也『平和をつくるを仕事にする』ちくまプリマー新書)を題材にした読解問題が出た。

《学習院中等科(2019年度・第1回)国語入試問題より抜粋(一部改題)》
(問)文中の「平和をつくる仕事」として当てはまらないものを次からすべて選び、記号で答えなさい。

ア どんな物が使われているかを調べ、買うものを決めること。
イ 貧しい国から資源を買ってあげ、商品を作っていくこと。
ウ 自分にとって本当の幸せな生活とは何なのか考えること。
エ 自分のところにある多様なエネルギー資源を利用すること。
オ 大量の商品やサービスを創り出し、他の国に売り出すこと。

(正解)イ、オ

東洋英和女学院では河川敷のホームレスと少年の交流を描いた小説(ドリアン助川『多摩川物語』ポプラ文庫収録の「台風のあとで」)から出題があった。なお、この本は昨年度の市川中学校でも取り上げられている。

ドリアン助川『多摩川物語』ポプラ文庫
《東洋英和女学院中学部(2019年度・A日程)国語入試問題より抜粋(一部改題)》
(問)文中「バンさんは雅之くんにすぐ気づいた。手招きをして、『おーい』と声をかけてきた。そしてまわりのホームレスの人たちに『友達だ』と紹介し、歯を見せて笑った」とありますが、ここからバンさんはどのような人柄だとわかりますか。あてはまるものを次のア~カの中から2つ選び記号で答えなさい。

ア 口べたで誠実な人柄。 イ 不まじめでだらしない人柄。 ウ 器用でねばり強い人柄。
エ 率直でおおらかな人柄。 オ 強引で勝手な事柄。 カ わけへだてのない気さくな人柄。

(正解)エ、カ

高輪では是枝裕和『万引き家族』(宝島社)から読解問題が出た。

是枝裕和『万引き家族』(宝島社)
《高輪中学校(2019年度・A日程)国語入試問題より抜粋(一部改題)》
(問)文中「泣きたくても泣けない」・「見えすいた嘘をついてきた」とありますが、これらのことから、実の家族の中でりんが置かれていた様子を、30字以内で答えなさい。

(正解例)母親に折檻されることを恐れ、本心を打ち明けられない様子。

上記は一例にすぎない。ここ数年、中学入試の国語・社会では「貧困問題」「格差問題」が出題のトレンドとなっている感がある。いったいどうしてだろうか。