新作映画『こどもしょくどう』を中学受験生は鑑賞せよ!

先日わたしは映画『こどもしょくどう』のマスコミ試写会に参加した。実写版『火垂るの墓』が話題になった日向寺太郎監督による新作映画である。

(画像=映画『こどもしょくどう』のウェブページより)

映画を鑑賞した直後の余韻に浸りながら、わたしが真っ先に思ったのは、この映画こそ中学受験に臨む親子にぜひとも鑑賞してほしいということだ。

この映画のテーマは「貧困」だ。物語は子どもたちの目線で進行していくため、主人公たちの葛藤や悩み、苦しみは、同年代の子たちにリアリティをもって伝わるはずだ。

主人公は、決して裕福ではないが、食堂を営む両親の愛情に包まれて暮らしている高野ユウト。物語は、母親のネグレクトに日々晒されている友人・大山タカシとのかかわりを静かに伝えていく。

急展開を見せるのは、河原に停められた車で生活をしている木下ミチル・木下ヒカル姉妹との出会いだ。姉妹とのやり取りに戸惑いを覚えつつも、彼女たちを何とかしたいという強い思いがユウトを動かすことになる。

困窮を極めた木下姉妹に対して、表面的なことばで事態を収拾しようとする父親にユウトはこんなことばを投げつける。

「何もしてくれなかったじゃん! いつも見ているだけだろ!」

このことばは父親だけに突きつけたものではない。これまでのユウト自身にも、そして、わたしたちにも向けられた痛烈なメッセージである。映画を鑑賞する子どもたちは、このことばをそれぞれどう受けとめるのだろうか。映画がクライマックスを迎える折、親は子の表情がどのように変化したのかをそっと観察してやってほしいと思う。

春休みに親子で映画を見て筆者の「出題」に答えてほしい

映画を鑑賞したあとは親子で感想を交換し合ってほしい。そんな親の働きかけこそが、子の社会的視野を広げる好機になると確信している。

加えて、この映画を鑑賞したみなさんに中学受験塾講師として1つの問題を出題してみたい。親子で話し合える材料の1つになるはずだ。

《(問)警察署で事情をきかれたあと、これから保護所に送られるだろう木下姉妹。車に乗り込む間際に振り向いて高野ユウトを見つめる木下ミチル、そして、何も言わずにミチルを見つめるユウト。この2人の心情を80~100字以内でそれぞれ答えなさい。なお、ユウトの心情については、このあと彼がとった行動も参考にすること》

ミチルとユウトは互いにことばを発せず、心の中でどんなことばを交わしたのだろうか。それを考えることが、現代に横たわる貧困や格差を考える端緒となるはずだ。

(写真=iStock.com)
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