今回は、トランプ大統領や金委員長の思考プロセスを把握することに努める。そうすると、両名に対峙するときの戦術というものが分かってくるのと同時に、実際の交渉ごとに活用できることが山ほどあることが分かる。まさに今回の米朝首脳会談は、交渉人にとっては最高の教材なんだ。

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トップと実務者との役割分担。トップの仕事は「事態を動かすこと」

トランプは準備不足のまま、自分の成果を誇示するためにトップ会談を重視しているという批判が多い。特に、外交官経験者や国際政治学者などは、専門家や実務者の協議を積み重ねるべきだと主張する。

もちろん具体的な詰めは専門家や実務者が担うところだし、そもそも専門家や実務者で協議がどんどん進むようなら、彼ら彼女らにまずは任せればいい。組織トップのマネジメントとして重要なことは、トップが自ら乗り出さなければならない状況なのか、それとも部下などの組織で対応すれば事足りるのかを見極めることだ。

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専門家や実務者は確かに知識はある。しかし「力」はない。そうなると、専門家や実務者で事態が動かない膠着状態に陥ったときに、話がそれ以上進まなくなる。

また特に関係者が複雑に絡む問題になればなるほど、特定分野の専門家や実務者の協議では事態は動かなくなる。 ある分野の交渉ごとが、他の分野に影響するということはよくあることだ。ある分野で交渉が完結するなら、その分野の専門家や実務者で協議は進む。しかし他分野に影響するなら、その他分野を所管する者との協議がさらに必要となる。

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事態が膠着してしまった場合、関係者が複雑に絡む場合にこそ、トップ会談が必要かつ重要になってくる。トップ会談で事態を動かし、目指すべき方向性を示す。そしてその中で、専門家や実務者が詰めの協議をしていく。これが複雑な交渉を組織で進める鉄則だ。

2月28日の米朝首脳会談決裂以後今に至るまで、特に新聞等の紙メディアにおいては、もっと専門家や実務者に協議させるべきだという専門家や実務者の意見が多かった。

では、これまで北朝鮮の核問題について専門家や実務者はどういう協議を行っていたというのか?

北朝鮮の核問題は、遠く金日成のときに遡る。明確に核実験をやり始めた2006年以後、国連安保理は北朝鮮に制裁を科すが、それから現在に至るまで専門家、実務者の協議はどうなっていたのか。まさに専門家、実務者の協議では事態が膠着して、解決の道筋が全く見えなかったではないか。

こういうときに事態を動かすために大衝撃を与えることこそがトップの役割であり、政治家の役割である。

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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.142(3月5日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【米朝会談に学ぶ「交渉術の授業」(1)】まずはトランプ大統領×金委員長の思考プロセスを読み解く》特集です。

(写真=AFP/時事通信フォト)
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